改訂新版 世界大百科事典 「キュナード汽船会社」の意味・わかりやすい解説
キュナード汽船[会社] (キュナードきせん)
Cunard Steamship Co.,Ltd.
イギリスの海運企業。かつて北大西洋航路の豪華客船クイーン・メアリーとクイーン・エリザベスの運航でその名を知られた。同社は1839年の創業以来,優れた経営と手厚い政府の保護に恵まれてその基礎を確立し,北大西洋における客船会社の雄として着実な発展をたどった。しかし,第2次大戦後の航空機の発達による海上旅客の減少に対処するために,1967年にクイーン・メアリーを,また68年にはクイーン・エリザベスをアメリカに売却し,新たに巡航客船クイーン・エリザベス2世を69年に就航させた。さらに貨物定期船,不定期船およびタンカー等の他の海運部門の経営に乗り出すほか,海底油田掘削リグ補給船の運航および貸船業,ホテル経営,不動産業等への進出を図った。貨物定期航路はキュナードが自ら経営し,北大西洋航路のコンテナ化に際してはスウェーデン,オランダおよびフランスの船社5社と協同してACL(Atlantic Container Line,Ltd.)を,また一方では国内船社4社と協同してACT(Associated Container Transportation,Ltd.)をそれぞれ結成して,これらコンテナ・コンソーシアムに参加している。これに対して,他の海運部門の経営と補給船の運航および貸船,ホテル経営,不動産業等は,キュナード・グループを形成する子会社を通じて行っている。なお71年にトラファルガー・ハウス投資会社に株式を買収され傘下に入った。
執筆者:織田 政夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報