タンカー(読み)たんかー(英語表記)tanker

翻訳|tanker

日本大百科全書(ニッポニカ) 「タンカー」の意味・わかりやすい解説

タンカー
たんかー
tanker

液体貨物船体と一体のタンクに積んで運ぶ船の総称だが、原油を輸送する船が圧倒的に多く、他の貨物を運搬する船は積み荷によって、液化ガスのLPGタンカー、LNGタンカー、液状化学製品のケミカルタンカーなどという。また、セメントばら積船は構造や外観が似ているので、セメントタンカーとよぶことがある。

 第二次世界大戦以前の油タンカーは、大きなものでも載貨重量1万5000トン程度であった。戦後、石油需要の増大とともに大型化が始まり、1960年ごろから急速に進んだ。載貨重量トン数で20万トンから30万トンの油タンカーをVLCC(very large crude oil carrier)、それ以上をULCC(ultra large crude oil carrier)とよぶ。最大級のものはフランスのバチラス号(1976建造、55万0001重量トン)、ピエール・ギョーマ号(1977建造、55万5031重量トン)の2隻と、リベリア船籍のシーワイズ・ジャイアント号(1980建造、56万4763重量トン)がある。これらは、二度にわたる石油ショックを経て船舶の大型化が沈静した現在では、当分破られることのない記録であろう。

 タンカーは船尾の上甲板下を機関室とし、上甲板上に居住区や船橋を配置し、その前方を貨物油タンクとしている。油タンカーの衝突や座礁による原油流出事故の教訓から、タンク1個当りの容積を制限することや、浸水しても沈没しがたい船とすることなどが国際条約として取り決められている。また、タンカーが運ぶ原油や化学製品には引火、爆発、腐食などの危険性が多いから、それぞれの特性に応じてタンクの構造、荷役装置、通風装置などには特別の考慮が払われている。荷役やタンクの洗浄の際には静電気が蓄積されて爆発の危険性が高くなることがあり、火の使用や金属の摩擦による火花の発生などにつき船内の生活においても細心の注意が必要になる。

[森田知治]

 1989年3月に起きた巨大タンカー(エクソン・バルディス号)の原油流出事故による環境破壊は深刻なものであった。それを受けて、IMO国際海事機関)では、新造のタンカーに対してダブルハル二重船殻)構造を義務づけ、2015年以降はシングルハル構造のタンカーの航行を禁止することを決定した。

[編集部]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「タンカー」の意味・わかりやすい解説

タンカー
tanker

液状貨物の運送専用の特殊貨物船。原油やガソリンを運ぶ油送船が代表的で,そのほか,糖蜜,アスファルト,ワイン,液化ガス,液体アンモニア,カセイソーダなどの専用船もある。小型の内航船と大型の外航船とに大別されるが,1960年代には 30万重量t級が,また 1970年代には 37万~48万重量t型の大型船が登場,さらに 1976年には 55万重量t型が竣工した。しかし,石油危機によるタンカー不況以来,船型の巨大化は一頓挫をきたした。一般に,容量が大きくなるにつれて直接運航費は安くなるが,接岸設備との関係で,無制限な大型化は物理的に制約される。耐用年数は,原油やガソリンの腐食作用のため,一般貨物船の平均 20年に比べて 12年と短い。

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