タンカー(その他表記)tanker

翻訳|tanker

デジタル大辞泉 「タンカー」の意味・読み・例文・類語

タンカー(tanker)

船内にタンクを備え、石油液化石油ガス硫酸などを運送する専用貨物船。ふつうオイルタンカーをさす。油送船油槽船

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「タンカー」の意味・読み・例文・類語

タンカー

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] tanker )
  2. 石油、液化石油ガス、硫酸などの液体の貨物を大量に輸送するために、船体そのものが液槽としてつくられた貨物船。ふつう、オイルタンカーをさす。油送船。油槽船。〔万国新語大辞典(1935)〕
    1. [初出の実例]「一万噸はありそうなタンカーの巨体がすぐ百メートル向こうに浮んでいる」(出典:河口にて(1960)〈北杜夫〉)
  3. 胴体中に燃料を積み、空中で他の飛行機に給油する飛行機。給油機。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「タンカー」の意味・わかりやすい解説

タンカー
tanker

槽船ともいう。液体貨物を船倉にばら積みして運搬する船の総称。タンカーの運ぶ貨物は原油,燃料油,石油精製品,液化石油ガス(LPG),液化天然ガスLNG)および化学薬品が主体であるが,このほかブドウ酒,糖みつ,魚油,植物油,あるいは水を運ぶこともある。一般にタンカーといえば液体石油類を運ぶ油送(槽)船(オイルタンカー)を指すことが多い。

原油を産地から精油所まで多量に運搬する原油タンカーのことであるが,精油所から燃料など石油精製品を需要地まで沿岸沿いに運ぶプロダクトキャリアをオイルタンカーに含めることもある。前者は一度に多くの油を運ぶほうが経済的なため,できるだけ大型船が望ましいが,港や航路の水深の制限があり,6万~28万トン程度の船が多い。原油を石油備蓄基地まで大型船で運び,そこからは中・小型タンカーで需要地まで運ぶ方式も取られている。プロダクトキャリアは重油や粗製ナフサなどを積むダーティープロダクトキャリアと,軽油,灯油,ガソリン,航空燃料油などを積むクリーンプロダクトキャリアに分けられる。前者は原油タンカーとほとんど同じ構造をしており,厳密に分類することがむずかしい場合もあるが,後者は材質や塗装などに特別な処置がしてあり,2万~3万トン程度の中・小型船が多い。

 タンカーの配置は船尾部に機関室と居住区を配し,そこから前方の大部分をタンクとしている。以前は居住区が船の中央にあったが,安全上の考慮などで今はすべて後部にある。貨油ポンプ室と燃料タンクを機関室と油タンクの間に配置し,油タンクの漏洩(ろうえい)が生じても安全なように考えてある。油タンク部は一般に2列の縦隔壁と4~8枚の横隔壁でくぎられ,それぞれが独立タンクとなっており,そのうちのいくつかがバラスト槽として使われ,残りが油タンクとして使われる。かつてはバラスト水は油を陸揚げした後の油タンクにも入れていたが,海洋汚染防止のため今はすべて専用バラスト槽だけに入れることが義務づけられている。船体構造は一部小型船を除き縦肋骨構造が用いられており,船底,外板,甲板はすべて単板であるが,油が流出しにくい2重底,あるいは2重外板構造も一部採用され始めている。油の荷役のためタンク内と上甲板上に数本の貨油管が走っており,ポンプ室のポンプと各タンクに接続している。陸とは上甲板中央部のマニホールドで特殊なジョイントを通して結ばれ,ポンプで荷役される。通常一昼夜で荷役は終了する。

LPGタンカーはガスを加圧,または冷凍して液化し,保冷されたタンクで運ぶもので,外面を防熱した鋼製のタンクを船倉内におく独立タンク方式,船体を二重構造として,その内面に施した防熱材の内側の金属薄板で液を保持するメンブレン方式などがある。8万m3程度まで運べるものがつくられている。LNGタンカーはLPGよりさらに低温(-161.5℃)にして液化して運ぶもので,独立タンク式,メンブレン式,セミメンブレン式などの構造様式があり,材料としてはアルミニウム,ニッケル鋼,ステンレス鋼などが用いられる。13万m3程度まで運べる。ケミカルタンカーは化学薬品などを運ぶもので,荷物の危険度と性質によってタンクの材質,塗装および構造にいろいろな考慮をしてつくられる。2重底をもったり,ステンレス加工をした船が多いが,船型としては4万トンクラスが多い。

かつて油は樽に詰めて運ばれていたが,運搬効率を上げようと1885年船体自身をタンクとしたグリュックアウフGlückauf(ドイツ。2307トン)がつくられた。これは現在のタンカーの原型をしており,タンカーとして登録された最初の船となった。その後1908年J.W.イシャウッドにより縦肋骨方式が確立され,現在まで基本的にこの構造が用いられている。日本でタンカーとしてつくられたのは,1907年の虎丸(513トン)が最初である。

 タンカーは第2次世界大戦前までにしだいに大型化し,1万~1万3000トンが標準となった。さらに第2次大戦後,50年代になって急速に大型化時代に入り,スーパータンカー,マンモスタンカーの名称も冠せられ,76年には55万トンを超えるものまで出現した。しかし,1973年のオイルショックにより巨大化にはブレーキがかけられ,現在では省エネルギー,省人化,自動化を採用した中型のものが主流を占めるようになっている。

 なお,タンカーの事故による海洋の汚染については,〈油汚染〉〈海洋汚染〉の項目を参照されたい。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「タンカー」の意味・わかりやすい解説

タンカー
たんかー
tanker

液体貨物を船体と一体のタンクに積んで運ぶ船の総称だが、原油を輸送する船が圧倒的に多く、他の貨物を運搬する船は積み荷によって、液化ガスのLPGタンカー、LNGタンカー、液状化学製品のケミカルタンカーなどという。また、セメントばら積船は構造や外観が似ているので、セメントタンカーとよぶことがある。

 第二次世界大戦以前の油タンカーは、大きなものでも載貨重量1万5000トン程度であった。戦後、石油需要の増大とともに大型化が始まり、1960年ごろから急速に進んだ。載貨重量トン数で20万トンから30万トンの油タンカーをVLCC(very large crude oil carrier)、それ以上をULCC(ultra large crude oil carrier)とよぶ。最大級のものはフランスのバチラス号(1976建造、55万0001重量トン)、ピエール・ギョーマ号(1977建造、55万5031重量トン)の2隻と、リベリア船籍のシーワイズ・ジャイアント号(1980建造、56万4763重量トン)がある。これらは、二度にわたる石油ショックを経て船舶の大型化が沈静した現在では、当分破られることのない記録であろう。

 タンカーは船尾の上甲板下を機関室とし、上甲板上に居住区や船橋を配置し、その前方を貨物油タンクとしている。油タンカーの衝突や座礁による原油流出事故の教訓から、タンク1個当りの容積を制限することや、浸水しても沈没しがたい船とすることなどが国際条約として取り決められている。また、タンカーが運ぶ原油や化学製品には引火、爆発、腐食などの危険性が多いから、それぞれの特性に応じてタンクの構造、荷役装置、通風装置などには特別の考慮が払われている。荷役やタンクの洗浄の際には静電気が蓄積されて爆発の危険性が高くなることがあり、火の使用や金属の摩擦による火花の発生などにつき船内の生活においても細心の注意が必要になる。

[森田知治]

 1989年3月に起きた巨大タンカー(エクソン・バルディス号)の原油流出事故による環境破壊は深刻なものであった。それを受けて、IMO(国際海事機関)では、新造のタンカーに対してダブルハル(二重船殻)構造を義務づけ、2015年以降はシングルハル構造のタンカーの航行を禁止することを決定した。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「タンカー」の意味・わかりやすい解説

タンカー

槽船とも。液状貨物を,タンクとして造られた水密区画に積載して輸送する専用船。オイルタンカー,LPGタンカー,LNGタンカーのほか,化学薬品,ブドウ酒なども広くタンカー輸送が行われるが,普通タンカーといえば,オイルタンカーをさす。
→関連項目LPGタンカーオイルタンカー貨物船船型

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「タンカー」の意味・わかりやすい解説

タンカー
tanker

液状貨物の運送専用の特殊貨物船。原油やガソリンを運ぶ油送船が代表的で,そのほか,糖蜜,アスファルト,ワイン,液化ガス,液体アンモニア,カセイソーダなどの専用船もある。小型の内航船と大型の外航船とに大別されるが,1960年代には 30万重量t級が,また 1970年代には 37万~48万重量t型の大型船が登場,さらに 1976年には 55万重量t型が竣工した。しかし,石油危機によるタンカー不況以来,船型の巨大化は一頓挫をきたした。一般に,容量が大きくなるにつれて直接運航費は安くなるが,接岸設備との関係で,無制限な大型化は物理的に制約される。耐用年数は,原油やガソリンの腐食作用のため,一般貨物船の平均 20年に比べて 12年と短い。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のタンカーの言及

【造船業】より

… 1960‐65年は,設備の大型化,合理化を進めた時期である。1956年後の輸出船ブーム時以降に輸出された船が日本船の評価を高め,VLCC(very large crude oil carrier,20万トン以上),ULCC(ultra VLCC,30万トン以上)などタンカー建造などに用いられる大型ドックのような大型新鋭設備の建設が進められた。一方では,大幅な生産性向上を可能とする合理的な建造法,ブロック建造工法,電子罫書(けがき)法,先行艤装などが導入され,世界のシェアの過半数を占めるに至った。…

※「タンカー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android