改訂新版 世界大百科事典 「ギトリー父子」の意味・わかりやすい解説
ギトリー父子 (ギトリーふし)
父リュシアンLucien Guitry(1860-1925)はフランスの俳優。コンセルバトアール卒業後18歳で初舞台を踏み,次いでペテルブルグで9年間出演し,1891年帰国。ロスタンやベルンスタンの戯曲の初演者,名女優レジャーヌの相手役として知られる。晩年には息子の戯曲やモリエールの作品に出演し,沈黙を利用する独特な演技によって名声を博した。息子サッシャSacha G.(1885-1957)はフランスの俳優,劇作家。ペテルブルグに生まれ,16歳で処女戯曲を発表,17歳で舞台にデビューした。その多芸多才ぶりは伝説的で,50年間に無数の芝居に出演し,生涯に100編以上の戯曲と多くの自作自演による映画を製作した。残された詩,随筆,デッサンの数もおびただしい。微妙な恋愛心理を鮮やかに描く彼の戯曲は両大戦間のパリのブールバール劇を風靡し,その軽薄さはしばしば非難されたが,鋭い観察眼による愛憎の解剖には,ときとして人を戦慄させるものがある。代表作は《夢をみよう》(1912),《カドリーユ》(1937)など。死後しばらくは忘れ去られたかにみえたが,近年に至って再評価の動きが盛んである。
執筆者:大久保 輝臣
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報