クシイモリ(その他表記)warty newt
crested newt
Triturus cristatus

改訂新版 世界大百科事典 「クシイモリ」の意味・わかりやすい解説

クシイモリ
warty newt
crested newt
Triturus cristatus

繁殖期の雄にはひれ状隆起を生じ,華やかな求愛行動を行うサンショウウオ科のイモリの1種。ヨーロッパ産イモリ属Triturusはすべて繁殖期の雄に,第二次性徴として美しい婚姻色とひれ飾を生ずる。とくにクシイモリは全長14~18cm,雌の最大は20cm余りで他種より大きく,繁殖期の雄には背面から尾部にかけて,正中線上に幅広い鋸歯状のひれ飾が発達し,腹面のオレンジ色も鮮やかとなる。本種は西はフランス,北はイギリス,スカンジナビア半島,東はウラル山脈に至るヨーロッパに広く分布し,平地から1000m級の山地までの森林にすむ。4~5月の繁殖期には深い湖に集まり,水中で尾をふるわせて華麗な求愛ディスプレーを行う。繁殖の際は他のイモリ類同様,雄の放出した精包を雌が総排出腔で取り入れる。1回の産卵数は200~300個ほど。イベリア半島,フランス西部に分布するマダライモリT.marmoratus(英名marbled newt),イベリア半島を除くヨーロッパの大部分に分布するオビイモリT.vulgaris(英名smooth newt)もひれ飾が発達するが,アルプス地方など中部地域に分布するミヤマイモリT.alpestris(英名alpine newt)は,尾部以外のひれ飾はわずかで,むしろ美しい色彩と斑点がよく目だつ。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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