翻訳|cloaca
総排泄腔ともいう。多くの脊椎動物では,消化管の終末部,左右の泌尿器の導管である尿管の末端,および左右の生殖腺の導管である精管または卵管の末端は,それぞれ別々に体外へ開口するのではなく,3者共同の単一の腔所でまず会合し,この腔所が単一の外口として外界へ開く。この共同の腔所を総排出腔という。cloacaの語はもとラテン語で下水溝を意味する。その外口をふつう肛門ventというが,正しくは総排出孔cloacal openingである。無顎類のヤツメウナギ,軟骨魚類のギンザメ,ほとんどすべての硬骨魚類,および単孔類以外の哺乳類では,消化管の末端は独立の外口すなわち肛門anusとして体外に開くが,その他の脊椎動物つまり卵生脊椎動物のほとんどは総排出腔をもっている。それらの動物のうち,交尾によって体内受精を行う卵生有羊膜類には,雄の精管の末端が陰茎に似た突起になっているもの(カメ,ワニ)や,1対のいわゆる半陰茎として外翻して突出するもの(ヘビ,トカゲ)がある。交尾時にはこの突起が雌の総排出腔へ挿入されるが,平常は総排出腔内に収納されていて体外からは見えない。しかし,喙頭(かいとう)類(ムカシトカゲ)や鳥類の雄は特殊な交尾器をもたず,交尾時にはただ総排出腔の外口どうしを合わせるだけで精子を伝達する。消化管の末端が独立の肛門になっている哺乳類(単孔類を除く)でも,発生過程でまだ雌雄の外形的区別がない時期には総排出腔があり,消化管の末端はこれに開口する。発育が進み交尾器(陰茎,腟)が分化するにつれて,消化管の末端が肛門として分離独立し,総排出腔のない状態となる。したがって,成熟後にも総排出腔をもつ動物は体制上低い段階にあるといえる。これらの種類では,総排出腔の外観には雌雄の区別がないが,その他の形質の性的二型(二次性徴)の発達によって,性別の明らかになるものが少なくない。
執筆者:田隅 本生
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
消化管の末端が膨大し、生殖輸管(輸卵管、輸精管)や輸尿管が開口する部分をいう。硬骨魚類以外の脊椎(せきつい)動物は、胚(はい)期には総排出腔をもち、両生類、爬虫(はちゅう)類、鳥類では成体になってもそのままであるが、哺乳(ほにゅう)類では総排出腔に仕切りが生じ、消化管(直腸)と尿生殖系が分離して、体外への開口部もそれぞれ異なっている。無脊椎動物では、輪形動物、線虫類、軟体動物などのあるものに、消化管と尿生殖系が合している部分があり、総排出腔とよばれる。
[八杉貞雄]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
… 脊椎動物では,消化管の末端が独立の穴として体外へ開口するのは,無顎類のヤツメウナギ,軟骨魚類のギンザメ,肺魚類・総鰭(そうき)類などを除く硬骨魚類,および単孔類以外の哺乳類で,これらの動物の消化管の開口部が厳密な意味での〈肛門anus〉である。これに対して,その他の脊椎動物では,消化管の末端は泌尿器および生殖器の末端とともに〈総排出腔cloaca〉とよばれる1個の腔所にまず合流し,さらにこの腔所がただ1個の穴として体外へ開口する。日本語ではこの開口をも〈肛門〉というが,英語などではこれをvent(通気孔,はけ口の意)とよんで区別する。…
… 脊椎動物では,消化管の末端が独立の穴として体外へ開口するのは,無顎類のヤツメウナギ,軟骨魚類のギンザメ,肺魚類・総鰭(そうき)類などを除く硬骨魚類,および単孔類以外の哺乳類で,これらの動物の消化管の開口部が厳密な意味での〈肛門anus〉である。これに対して,その他の脊椎動物では,消化管の末端は泌尿器および生殖器の末端とともに〈総排出腔cloaca〉とよばれる1個の腔所にまず合流し,さらにこの腔所がただ1個の穴として体外へ開口する。日本語ではこの開口をも〈肛門〉というが,英語などではこれをvent(通気孔,はけ口の意)とよんで区別する。…
…脊椎動物のうち硬骨魚類の輸尿管は肛門の後方に開くが,その直前でふくらんで膀胱となり,尿を一時貯蔵する。軟骨魚類,両生類,爬虫類および鳥類では,輸尿管が直腸末端の総排出腔の背部に開いている。このうち両生類では総排出腔の腹側がふくらんで膀胱となるが,鳥類には膀胱はない。…
※「総排出腔」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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