日本大百科全書(ニッポニカ) 「クルト」の意味・わかりやすい解説
クルト
くると
Ernst Kurth
(1886―1946)
スイスの音楽学者。ウィーンの生まれ。ウィーン大学でアドラーに音楽学を学び、1908年にグルックの初期のオペラに関する論文によって学位を取得する。1912年よりベルン大学で教鞭(きょうべん)をとり、27年から没するまで正教授を務めた。バッハ、ワーグナー、ブルックナーなどを個別的に扱った著作を経て、主著『音楽心理学』Musikpsychologie(1930)に集大成されるクルトの思想の核心は、音楽を人間のもつ内的エネルギーの動的展開としてとらえる点にあった。それは、音楽をエネルギー運動とみる当時の「エネルギー説」の一形態であるが、生の哲学の影響下に、音楽を人間のもつ根源的な力との関係において解明しようとした点に特色がある。
[渡辺 裕]