改訂新版 世界大百科事典 「クワガタモドキ」の意味・わかりやすい解説
クワガタモドキ
Trictenotoma davidi
甲虫目クワガタモドキ科の昆虫。和名は大あごがクワガタムシ類のように発達していることによる。中国中・南部や台湾に分布するが,日本にはいない。体長5cm内外で灰褐色の短毛を密生する。幼虫は枯木,朽木の樹皮下に穿孔(せんこう)し,樹皮下で蛹化(ようか),5月ごろから成虫となって出現する。よく飛翔(ひしよう)し,樹液に好んで集まるという。幼虫のからだは白色で細長く,1対の尾突起と胸脚を有する。
クワガタモドキ科Trictenotomidaeは10種余りが知られているが,おもに熱帯アジアの森林に生息し,日本には生息しない。クワガタモドキ科は分類上も最初はクワガタムシ科に含められていた。しかし長い触角など,形はカミキリムシ科に似る。成虫の脚の跗節(ふせつ)の数や幼虫の形態から,クワガタムシ科やカミキリムシ科とは系統的にかなり離れた,ヒラタムシ上科異節群に属することが明らかとなった。
執筆者:林 長閑
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報