日本大百科全書(ニッポニカ) 「グイエ」の意味・わかりやすい解説
グイエ
ぐいえ
Henri Gouhier
(1898―1996)
フランスの哲学者、哲学史家。オーセルに生まれる。1919年エコール・ノルマル・シュペリュール(高等師範学校)卒業。1936年リール大学、1948~1968年ソルボンヌ大学(パリ大学)教授。1961年道徳政治科学アカデミー会員、1979年アカデミー・フランセーズ会員。1924年『デカルトの宗教思想』La pensée religieuse de Descartesでアカデミー・フランセーズ賞を獲得。以後デカルト、パスカル、マルブランシュ、ルソー、メーヌ・ド・ビラン、コント、ベルクソンらを主題とする哲学史研究に新境地を拓(ひら)いた。その特色は、対象としてはとくに宗教思想を好んで論じ、見方としては思想を創造活動としてとらえるところにある。人間の創造的営為を歴史的現実とみるグイエは、同じく歴史を織り成すドラマにも関心を寄せ、『演劇の本質』(1943)をはじめとする数巻の著書において、独自の演劇美学を展開した。
[佐々木健一 2015年5月19日]
『佐々木健一訳・解題『演劇の本質』(1976・TBSブリタニカ)』▽『アンリ・グイエ著、中村雄二郎・原田佳彦訳『人間デカルト』(1981/新装版・1988・白水社)』▽『アンリ・グイエ著、佐々木健一訳・解説『演劇と存在』(1990・未来社)』