中村雄二郎(読み)ナカムラユウジロウ

デジタル大辞泉 「中村雄二郎」の意味・読み・例文・類語

なかむら‐ゆうじろう〔‐ユウジラウ〕【中村雄二郎】

[1925~2017]哲学者。東京の生まれ。明大教授。フランス哲学基盤に、宗教言語文化などさまざまな分野を幅広く論じた。哲学入門書も多く手がけ、昭和59年(1984)刊行の「術語集」がベストセラーとなる。他に「共通感覚論」「魔女ランダ考」「宗教とはなにか」など。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「中村雄二郎」の意味・わかりやすい解説

中村雄二郎
なかむらゆうじろう
(1925―2017)

哲学者。東京生まれ。1950年(昭和25)東京大学文学部哲学科卒業。1951年から文化放送でプロデューサーを務めた後に、明治大学法学部講師、同助教授、同教授を歴任。1998年(平成10)の退職後は同名誉教授。

 社会をめぐる合理性と情念の絡み合いを論じた『現代情念論』(1962)を皮切りに、オリジナルな思想を展開した『感性覚醒』(1975)、『哲学の現在』(1977)、『共通感覚論』(1979)の三部作によって日本を代表する哲学者として名声を高める。その後もインドネシアのバリ島の演劇に登場する魔女ランダを手がかりに演劇的思考を提案する『魔女ランダ考』(1983)、生命や自然との柔らかなかかわりを探求する『臨床の知とは何か』(1992)など、現代人の思考のあり方を問い直す議論提起

 また西田哲学の五つの概念「純粋経験」「無の論理」「弁証法的一般者」「行為的直観」「絶対矛盾的自己同一」を「問題群」としてとらえ直した『西田幾多郎(にしだきたろう)Ⅰ』(1983)、西田と現代思想との関連を探った『西田幾多郎Ⅱ』(1983)があり、大作『精神のフーガ』(2000)では音楽を基調としてピタゴラスからデカルトを経てドルーズガタリへと展開する哲学的思考を縦横に論ずる。

 エッセイには、哲学入門でもあり自伝的要素も含む『哲学の五十年』、脳死や臓器移植を扱った『死と生のレッスン』(ともに1999)、芸術論として『歓ばしきポイエシス』(2001)、テクノロジー論として『デジタルな時代』(2000)などがある。

 またインターネットと出版を融合する試みとして「中村雄二郎のインターネット哲学アゴラ」を開設。異なるテーマをめぐって中村がゲストと議論を行ってウェブ上に公開。閲覧者からの意見や、画像や音声ファイルを収録したCD-ROM付きの書籍を「21世紀のキーワード」シリーズとして出版した。

 難解な哲学用語を平易に解説した『術語集』(1984)をはじめ入門書も数多く、ミシェル・フーコーの翻訳者としても知られる。21世紀の戦争やテロに関しての論考には『テロは世界を変えたか』(2003)がある。

[織田竜也 2019年1月21日]

『『中村雄二郎著作集第一期』10巻(1993・岩波書店)』『『生命:池田清彦』『宗教:町田宗鳳』『哲学:いとうせいこう』『死:小松和彦』『弱さ:金子郁容』『文化:姜尚中』『日本社会:上野千鶴子』『歴史:野家啓一』(1998〜2000・岩波書店「21世紀へのキーワード」)』『『哲学の五十年』『死と生のレッスン』(1999・青土社)』『『精神のフーガ』(2000・小学館)』『『デジタルな時代』(2000・青土社)』『『中村雄二郎著作集第二期』10巻(2000~2001・岩波書店)』『『歓ばしきポイエシス』(2001・青土社)』『『テロは世界を変えたか』(2003・青土社)』『『現代情念論』(講談社学術文庫)』『『感性の覚醒』(岩波同時代ライブラリー)』『『西田幾多郎Ⅰ』『西田幾多郎Ⅱ』『共通感覚論』『魔女ランダ考』(岩波現代文庫)』『『哲学の現在』『臨床の知とは何か』『術語集』(岩波新書)』

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「中村雄二郎」の解説

中村雄二郎 なかむら-ゆうじろう

1925- 昭和後期-平成時代の哲学者。
大正14年10月13日生まれ。文化放送プロデューサーをへて,昭和40年明大教授。「パトスの知」や「演劇的知」などの知の範型をつくり,独自な哲学を展開。またフランス哲学を基盤として,言語・文化現象などさまざまな領域にわたり活発な著作活動をおこなう。東京出身。東大卒。著作に「現代情念論」「共通感覚論」「述語的世界と制度」「宗教とはなにか」など。

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