改訂新版 世界大百科事典 「グプタ文字」の意味・わかりやすい解説
グプタ文字 (グプタもじ)
古代のインドの文字であるブラーフミー文字のうち北方系のもの。グプタ朝期に,バラモン教学の体系化,法典類の整備が進められ,サンスクリット文学は最盛期に入り,美術工芸,天文学,数学,医学の各分野で進歩が見られた。これは各分野にわたって膨大な文書,文献が書かれたことを意味し,書字材料,技法の進歩を示唆する。これまでのブラーフミー文字と比べると,より速く書け,装飾を施し,しかも均斉美を重視する傾向が見られるようになった。アラーハーバードにあるグプタ朝の王サムドラグプタの碑文(350年ころ)は代表例としてよく知られている。この文字は,5,6世紀に西北インドを経由して中央アジアに入り,カローシュティー文字に取って代わった。
→インド系文字
執筆者:田中 敏雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報