改訂新版 世界大百科事典 「グラブリト」の意味・わかりやすい解説
グラブリト
Glavlit
ソ連邦の検閲機関。文学・出版総局Glavnoe upravlenie po delam literatury i izdatel'stvの略称。1922年,教育人民委員部の一機関として創設され,当初の目的としては,出版物に対する各種検閲の統合,ソ連の政治・軍事・経済・文化的利益の擁護のための事前・事後の検閲,監督がかかげられた。総局には年次出版計画の策定,外国出版物輸入規制の権限も与えられ,一時はラジオ放送もその管理下に置かれた。初代の総局長はレベジェフ・ポリャンスキーP.I.Lebedev-Polyanskii(1881-1948)で,20年代についてはその活動も公表され,発禁処分の比率が年次0.3~1.0%の水準にあることも明らかにされていた。ただし作家たちからは,これは帝政時代の1865-1917年に内務省に付属して置かれた出版総局(グラブペチャーチ)の後身と目されていた。
30年代以降は,この総局の活動が非公然化され,実態がつかみにくくなる。現在,総局の活動の公然面は,ソ連および各共和国内閣付属の出版・印刷・図書販売国家委員会に移されており,ほかに国家機密保護出版総局が設けられているが,〈グラブリト〉という言葉は〈検閲〉の代名詞として生き残り,67年ソルジェニーツィンは第4回ソ連作家大会にあてた手紙で,〈不法な検閲が“グラブリト”というあいまいな名称のもとに文学を圧迫している〉と抗議した。出版所,雑誌編集部の自己規制のほかに,ソ連に強力な権限をもつ〈グラブリト〉の検閲機構が存在し,発行禁止,ページ組替えなどの措置を取っていたことは疑いがない。しかしペレストロイカ以後は廃止された。
執筆者:江川 卓
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報