改訂新版 世界大百科事典 「グレバン」の意味・わかりやすい解説
グレバン
Jacques Grévin
生没年:1538-70
フランスの文学者,医学者。短い生涯ながら多方面にわたる知的活動を展開した典型的なルネサンス人の一人。パリの北方クレルモンに生まれ,早くからパリに出て人文学や医学を学んだが,同時に詩作や演劇にもおおいに情熱を燃やした。プレイヤード派の若き詩人ロンサール,デュ・ベレーと知り合い,その影響のもとに綴った恋愛詩を詩集《オリンポス》(1560)として刊行。演劇においては,中世劇の低俗さを憎んで古代劇を範とし,フランス語初の創作悲劇《カエサル》(1561)あるいは喜劇《出納官夫人》(1559),《みんなびっくり》(1561)などを書き,ルネサンス演劇の成立に重要な貢献をした。医学者としても著作が多く,高い名声を得ていた。新教を奉ずるに及んで身の危険を感じ,ロンドン,アントワープに逃れたが,最後はトリノに移ってそこで没した。
執筆者:長谷川 太郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報