日本大百科全書(ニッポニカ) 「コケウツボ」の意味・わかりやすい解説
コケウツボ
こけうつぼ / 苔鱓
reticulate hookjaw moray
[学] Enchelycore lichenosa
硬骨魚綱ウナギ目ウツボ科に属する海水魚。相模(さがみ)湾以南の太平洋沿岸、小笠原(おがさわら)諸島、台湾、ガラパゴス諸島などの沿岸に分布する。体は細長く、側扁(そくへん)する。全長は頭長の6.8~7.5倍、鰓孔(さいこう)部の体高の14~18倍。総脊椎(せきつい)骨は148~153個。肛門(こうもん)は体の中央部付近に開く。上下両顎(りょうがく)は細長くて湾曲しているので、口はぴったりと閉じられない。後鼻孔(こうびこう)は管状ではない。両顎の歯は牙(きば)状で、2~3列に並ぶ。背びれは鰓孔の上方から、臀(しり)びれは肛門の直後から始まる。体は暗褐色の地に3列の黄金色の不規則な斑紋(はんもん)がある。頭部は無数の小さな不定形の黄金色の斑紋で覆われる。頭部、腹面の下方および斑紋の間に無数の小さい斑点がある。斑紋が群生するコケを思わせるのでこの和名がある。水深5~24メートルの沿岸の岩がごろごろした岩礁域にすむ。いつも呼吸のために口を開け閉めしている。最大全長は約90センチメートルになる。食料として利用されていない。
[浅野博利・尼岡邦夫 2019年2月18日]