ガラパゴス諸島(読み)ガラパゴスショトウ(その他表記)Archipiélago de Galápagos

デジタル大辞泉 「ガラパゴス諸島」の意味・読み・例文・類語

ガラパゴス‐しょとう〔‐シヨタウ〕【ガラパゴス諸島】

《Galápagosはスペイン語で亀の意》太平洋の赤道直下にある火山性諸島。エクアドルに属し、主島はイサベラ島。面積7680平方キロメートル。ガラパゴスゾウガメガラパゴスリクイグアナウミイグアナなど固有の動植物が生息。ダーウィンが、島ごとに生物が微妙に違うところから進化論のヒントを得たといわれる。1978年、世界遺産(自然遺産)に登録。2001年には周辺の海洋保護区が追加登録された。コロン諸島

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共同通信ニュース用語解説 「ガラパゴス諸島」の解説

ガラパゴス諸島

エクアドル本土から西に約千キロ離れた赤道直下の太平洋にある大小100超の火山群島。名前の由来はスペイン語でカメを意味するガラパゴ。ゾウガメイグアナなど希少な動植物が生息する。19世紀に英国からダーウィンが訪れ、進化論提唱に大きな影響を与えた。1978年に世界自然遺産の第1号に登録された。(サンパウロ共同)

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精選版 日本国語大辞典 「ガラパゴス諸島」の意味・読み・例文・類語

ガラパゴス‐しょとう‥ショタウ【ガラパゴス諸島】

  1. ( ガラパゴスは[スペイン語] Galápagos 「カメ」の意 ) 太平洋東部、赤道直下に点在するエクアドル領の火山群島。ゾウガメをはじめ、固有の生物が多い。ダーウィンが、島ごとにその動物相が異なることに気づき、進化論の成立へとつながったことで有名。コロン諸島。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ガラパゴス諸島」の意味・わかりやすい解説

ガラパゴス諸島
がらぱごすしょとう
Archipiélago de Galápagos

南アメリカ、エクアドルの海岸の西方900キロメートルから1200キロメートルの赤道直下の太平洋上に散らばる諸島。正称はコロンColón諸島といい、コロン諸島州としてエクアドルの一州をなす。イサベラ島、サンタ・クルス島、フェルナンディナ島、サン・サルバドル島、およびサン・クリストバル島の五つの大きな島を中心に30の島々と無数の岩礁からなる。フェルナンディナ島を除く主要4島にのみ住民がいる。面積7844平方キロメートル、人口1万8555(2001)。ナスカプレートとココスプレートの境界をなすカーネギー海嶺(かいれい)上にある玄武岩質岩石からなる火山島で、最近もっとも活動的なラ・クンブレ火山(フェルナンディナ島)をはじめ大小無数の火山がある。1535年に発見されて以来、海賊の隠れ場所や捕鯨船の基地であったが、1830年エクアドル領となった。ダーウィンが動植物および地質の観察から進化論についての基礎的アイデアを得た島として有名である。サン・クリストバル島に行政中心都市プエルト・バケリソPuerto Baquerizoがある。1978年に世界遺産の自然遺産として登録されている(世界自然遺産。2001年登録地域を拡張)。

[松本栄次]

自然環境の特性

赤道直下に位置するガラパゴス諸島の季節、気候、動植物相は海流の影響によって特徴づけられる。1年のうち6~12月は、南東の貿易風によって南から流れてくるペルー海流フンボルト海流)の続流である低温の南赤道海流がガラパゴス諸島を洗い、海岸は霧に包まれるが、内陸は乾燥している。1~5月には貿易風は弱まり、パナマ湾から流れてくる海水の温度は比較的高くなる。ときには異常高温で、塩分濃度が低くなるエルニーニョ現象が起こり、温暖で雨が多くなる。ただし、エルニーニョ現象の勢力は、年により大きく変動する。ガラパゴス諸島に影響を与えている第二の海流にはクロムウェル海流とよばれる赤道潜流がある。これは海面下を流れる寒流で、ガラパゴス諸島の西部で海表面に上昇してくる。このため、フェルナンディナ島周辺やイサベラ島西岸は気温が低く、また海産生物は豊富になっている。

 ガラパゴス諸島の生物相は、動物相に特異なものがみられるが、植生は乾燥のため貧弱である。裸子植物、ユリ科、リュウゼツラン科、ヤシ科を欠き、キク科、トウダイグサ科サボテン科の種類が多く、これらのなかに固有種(キク科の木本植物スカレシア属の14種など)がみられる。ここでは動物相について述べる。

[新妻昭夫]

動物相

イギリスの博物学者ダーウィンは、22歳の冬に軍艦ビーグル号に乗り込んで世界周航の旅に出た。4年目の1835年9月にガラパゴス諸島を訪れた彼は、この地方の副知事ロースンから、「カメはそれぞれの島ごとに異なっているので、見ればどの島のものか断言できる」という話を聞いた。甲らの形状に差異があるだけでなく、肉の味までも違うという。ダーウィンはこのとき初めて、各島間で生物が微妙に異なることに気づき、やがて『種の起原』(1859)にたどり着くべき進化論のヒントを得たといわれている。ちなみに、ガラパゴスとはスペイン語でカメの意味である。

 このとき以来、ガラパゴス諸島は進化論の舞台として有名となり、その特異な動物相が注目されてきた。ゾウガメとともに進化論のモデルとなったのがダーウィンフィンチ類である。この小鳥は近縁な13種に分類され、嘴(くちばし)の形状がすこしずつ異なる。南アメリカから移住してきた祖先が適応放散してそれぞれの生態的地位につき、採餌(さいじ)習性をそれぞれ違えたのである。この小鳥類の進化については、『ダーウィンフィンチ』の著作で知られるD・ラックの有名な研究がある。ダーウィンフィンチ類のなかでとくに風変わりな習性をもつのは、サボテンの刺(とげ)を道具に使って樹木の穴の中の虫をとらえるキツツキフィンチであろう。

 ガラパゴス諸島の特徴的な動物を列挙すると、まず爬虫(はちゅう)類としては、前述のゾウガメ14~15種類のほかに、ウミイグアナとリクイグアナ、ヨウガンイグアナ、ガラパゴスヘビ、およびほかの地域にも広く分布するヤモリがいる。陸鳥類としては、ダーウィンフィンチが卓越しているが、ほかにマネシツグミ類、ガラパゴスバト、ガラパゴスノスリが有名である。海鳥は豊富であるが、特異的なものとしてガラパゴスペンギンと翼が退化したコバネウがあげられる。陸生哺乳(ほにゅう)類はきわめて貧弱で、コメネズミ類Nesoryzomysしかいない。海生哺乳類としてガラパゴスアシカがいる。捕食者がいないので、ガラパゴス諸島の動物は概して無防備で、人間を恐れない。なお、淡水魚と両生類はまったく生息しない。

 ガラパゴス諸島の動物相は、そのほとんどが南アメリカ大陸に近縁種がいる。かつてはガラパゴス諸島と南アメリカの間に陸橋があったとする説もあったが、現在はほぼ否定されている。流木などに乗り海流によって漂着した祖先種が、この諸島で独特の進化を遂げたのであろう。ただ一つの例外は、陸生の貝類トマテリデス・チャサメンシスTomatellides chathamensisで、ポリネシア系と考えられている。1964年にサンタ・クルス島のアカデミー湾にダーウィン研究所が設立され、進化論の舞台であるガラパゴス諸島の動植物の研究と保護の中心となっている。

[新妻昭夫]

『伊藤秀三著『ガラパゴス諸島――進化論のふるさと』(中公新書)』


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改訂新版 世界大百科事典 「ガラパゴス諸島」の意味・わかりやすい解説

ガラパゴス[諸島]
Galápagos Islands

南米エクアドルの海岸から約1000km離れた赤道直下の太平洋上に位置するエクアドル領の火山島群。正称はコロン諸島Archipiélago de Colón。面積8000km2。人口9750(1990)。コロン諸島州として一州をなし,国防省の管轄下にある。州都はサン・クリストバル島のサン・クリストバル。最大のイサベラ島のほか,サンタ・クルス島,フロレアナ島,フェルナンディナ島など18の島々と多数の小島からなる。赤道直下であるにもかかわらず,寒流であるペルー海流が流れて来ているため,一般に気候は温和で少雨。1月から4月は高温だが夕立があり,5月から12月は雨がなく低温で霧が発生しやすい。乾燥のため植生は貧弱だが,巨大な陸ガメ(スペイン語でガラパゴ)やイグアナなど,特異な動物相が見られ,保護区となっている。1535年,スペイン人トマス・デ・ベルランガTomás de Berlangaによって発見されたが無人島だった。1832年よりエクアドル領。1835年,C.ダーウィンがビーグル号でこの島を訪れて観察を行った。その成果は,《ビーグル号航海記》や《種の起原》にとり入れられたため,この島は一躍有名となった。
執筆者:

同類や近縁種の地球上での分布を調べると,海洋島の生物相の由来が明らかとなる。ガラパゴスアシカはカリフォルニアアシカの亜種で北半球系,ガラパゴスオットセイはミナミオットセイの亜種で南半球系の動物である。ガラパゴスペンギンは南米南部に生息するマゼランペンギンの近縁種である。多くの動物は南米大陸に同類または近縁種がいて,動物相全体としては南米系の色彩が強い。高等植物にも熱帯アメリカとの共通種が多く,固有種でも南米に祖先型が求められるものが多い。C.ダーウィンが《ビーグル号航海記》(1839)の中で〈この諸島はそれ自身まとまった世界であり,かつ南米大陸の衛星である〉とのべたことは,現代にも通用する指摘であった。

 ガラパゴス諸島は南米大陸から1000km隔たっているために,生物相はつぎの特徴を備えるにいたっている。第1は,中南米で普通の生物群が欠けていたり異常に貧弱なことである。陸上の哺乳類にはネズミ類6種とコウモリ2種のみ,両生類はまったく生息せず,昆虫類ではカワゲラ類,カゲロウ類,トビケラ類,ナナフシ類が欠け,ハチは1種,チョウ(蝶)は8種しかいない。この原因は,1000kmの海を越えて陸上動物が移動し難いことにある。植物相も同様で,裸子植物,ユリ科,リュウゼツラン科,ヤシ科を欠く。いっぽうでは異常に繁栄している生物群がある。動物では爬虫類と鳥類が多い。爬虫類ではゾウガメ(14亜種),リクイグアナ(2種),ウミイグアナ(1種),ヨウガントカゲ(7種),ヤモリ(6種)など,陸上の鳥類ではダーウィンフィンチ(13種)とマネシツグミ(4種7亜種)が繁栄する。海鳥も多い。植物ではキク科,トウダイグサ科,サボテン科に種類が多い。

 生物相の第2の特徴は,この諸島固有の生物が多いことである。上にあげた爬虫類はヤモリの1種を除き全種が固有種,鳥類はガラパゴスに営巣する57種のうち28種が固有である。上記のほか,コバネウ,ペンギン,アホウドリ,イワカモメ,アオメバトなどが固有種の例である。植物においては上記の3科に固有種が多い。そのうち低地の乾燥地帯のサボテン科の3属8種,キク科の木本植物スカレシア属14種はすべて固有種である。スカレシアの1種は最大樹高15m,幹径20cmになる木本で,山地中腹の湿潤地帯に密林をなす。種子植物全体では固有種率は53%に達し,固有属はキク科に4属(いずれも木本性),サボテン科に2属,ウリ科に1属ある。以上の2大特徴は,諸島が大陸から遠く隔離されていて生物が移動して来にくいこと,諸島内で独自に生物進化がすすんだことに原因する。なお,1964年チャールズ・ダーウィン研究所がサンタ・クルス島に設立されている。
執筆者:

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ガラパゴス諸島」の意味・わかりやすい解説

ガラパゴス諸島
ガラパゴスしょとう
Galapagos Islands

エクアドル西岸から約 1000km西の太平洋上にあるエクアドル領の島群。正式名称はコロン諸島 Archipiélago de Colón。総面積の半分以上を占めるイサベラ島をはじめ,サンタクルス島サンクリストバル島,サンサルバドル島,フェルナンディア島などの比較的大きな島のほか,多数の小島や岩礁からなる。行政的にはガラパゴス州を形成。州都サンクリストバル(サンクリストバル島)。成因についてははっきりしないが,島群自体はおもに溶岩によって形成された楯状火山である。活火山もあり,1980年11月にイサベラ島が噴火。これら火山は基部の直径 10~30km,山頂に大きく深いカルデラが形成されているものが多い。北上してくる冷たいペルー海流の影響で,赤道直下に位置するわりに気温,水温とも低い。全般に降水量が少なく,海岸低地はサボテンが生育する乾燥地帯となっているが,内陸の高地では比較的雨が多く,山地斜面は森林に覆われる。1535年に発見されて以来約 3世紀の間は定住者がいなかったが,1832年にエクアドルが入植を開始するとともに領有を宣言。1835年『ビーグル号』で訪れたチャールズ・R.ダーウィンが島での動物観察から着想を得て自然選択説を展開したため,以後興味深い動物相を示す島群として世界的に知られるようになった。両生類が存在せず,哺乳類の種もごくわずかである反面,きわめて多い爬虫類留鳥のほとんどすべてが固有種である。このうち,スペイン語でガラパゴと呼ばれ島名の由来となったゾウガメ(ガラパゴスゾウガメ),ヒワの仲間のダーウィンフィンチ,陸生および水生の巨大なイグアナなどが有名。さらにガラパゴスゾウガメは島ごとに異なる独自の亜種が,またダーウィンフィンチ類は島ごとに異なる種となって生息していることが知られている。しかしこれら固有種も,乱獲や野生化した家畜などの影響でしだいに数が少なくなってきたため,政府は 1968年全域を国立公園に指定,さらに 1978年には世界遺産の自然遺産に登録され,やはり固有種の多い植物も含めて,それらの保存に努めている。1994年4月イサベラ島に大規模な山火事が発生,貴重生物が危険にさらされた。住民はサンクリストバル島,サンタクルス島,イサベラ島,サンタマリア島の各島に小集落をなして住み,野菜,熱帯果樹,コーヒーなどの栽培,牧牛,漁業などを行なっている。魚類,コーヒー,ウシなどはサンクリストバル島の港プエルトバケリソモレノから本土に移出されているが,観光が主産業。サンタクルス島にダーウィン生物学研究所がある。面積 8010km2。人口 2万5124(2010)。

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世界遺産詳解 「ガラパゴス諸島」の解説

ガラパゴスしょとう【ガラパゴス諸島】

1978年に登録、2001年に登録内容が変更されたエクアドルの世界遺産(自然遺産)で、南アメリカ大陸の西方の太平洋上に位置する。ガラパゴスはスペイン語で「淡水に棲むカメ」という意味。19のおもな島と40余りの小島からなる火山群島。誕生は、最も古い島は300~500万年前、新しい島は数十年前といわれ、イサベラ島、サンタ・クルス島をはじめとする島々は、今なお火山活動を続けている。他の大陸と隔絶されているため、独自の進化を遂げた動植物が数多く生息、ガラパゴスゾウガメ、ガラパゴスリクイグアナ、ガラパゴスウミイグアナ、アメリカグンカンドリ、ガラパゴスペンギン、ガラパゴスコバネウなどが生息する。ダーウィンが進化論の着想を得た島として有名。1978年に重要な生物学的価値が評価されて世界遺産に登録、2001年にガラパゴス海洋保護区を含めて再登録された。2007年には、危機遺産リストに登録されたが、2010年にはずされた。◇英名はGalápagos Islands

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世界大百科事典(旧版)内のガラパゴス諸島の言及

【スカレシア】より

…ガラパゴス諸島に特産するキク科の木本属(イラスト)。同諸島特産のゾウガメやフィンチとともに,19世紀初めビーグル号で訪れたC.ダーウィンに注目されたことで有名。…

※「ガラパゴス諸島」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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