行李(読み)あんり

精選版 日本国語大辞典 「行李」の意味・読み・例文・類語

あん‐り【行李】

〘名〙 (「あん」は「行」の唐宋音)
① 旅の荷物。また、それを入れる物。こうり。〔運歩色葉(1548)〕〔韓愈‐送石洪士序〕
正法眼蔵(1231‐53)現成公案「もし行李をしたくして箇裏(こり)に帰すれば、万法われにあらぬ道理あきらけし」
使者。つかい。こうり。〔書言字考節用集(1717)〕

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デジタル大辞泉 「行李」の意味・読み・例文・類語

こう‐り〔カウ‐〕【行×李/×梱】

竹や柳で編んだ箱形の物入れ。旅行の際に荷物を運搬するのに用いたが、今日では衣類の保管などに使用。「柳―」
旅行に持っていく荷物。旅のしたく。また、旅。
軍隊で、戦闘や宿営に必要な資材などを運ぶ部隊。旧日本陸軍には、大行李と、小行李とがあった。

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普及版 字通 「行李」の読み・字形・画数・意味

【行李】こう(かう)り

旅に携える荷物。古くは外国使人を扱う官。〔左伝、僖三十年〕を舍(す)てて以て東と爲らば、行李の來に、其の乏困に供せしめば、君も亦たある無(なか)らん。

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改訂新版 世界大百科事典 「行李」の意味・わかりやすい解説

行李 (こうり)

竹や柳,葛(かずら)などで編んだかぶせぶたの箱で,衣類などを入れ,旅行や移動の際にも使われる。行李という言葉は漢語役所の使者とか旅行者,旅行の荷物などの意味がある。日本ではおそらく,最初は旅行の荷物の意味で行李の語を用いたのであろう。だが,日本の行李にあたるものは中国では笥(し)という。行李が普及するのは江戸時代になってからであるが,同様のものはすでに正倉院にのこり,葛や柳製でやや小型だが,製法は今日の行李とまったく同じである。一方,室町時代になると葛籠つづら)が生まれた。葛籠は本来はツヅラフジ製で四隅と縁をなめし革で補強してあるものだが,後には一閑張(いつかんばり)や,杉,竹の枠にむしろを張ったものも葛籠と呼ばれた。この葛籠をさらに簡便にしたものが行李で,葛籠も行李も江戸時代には商品生産化されている。近代に入っても衣類入れとして家庭の必需品であった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「行李」の意味・わかりやすい解説

行李
こうり

柳や竹、籐(とう)で編んだ物入れで葛籠(つづら)の一種。素材によって柳行李、竹行李、籐行李とよぶ。衣類入れのほか弁当行李、薬屋行李とよばれるものもある。正倉院に小型のものが残っているが、広く普及したのは江戸時代以後である。多くは長方形で深いかぶせ蓋(ぶた)になっており、旅行または日常に衣類その他手回りの品を入れた。近江(おうみ)水口・高宮・日向(ひゅうが)は籐行李、山城(やましろ)・越前(えちぜん)は竹の網代(あじろ)行李、但馬(たじま)・備中(びっちゅう)・備後(びんご)は柳行李の産地として知られる。なお、中国では官の使者のことを行李といい、仏教では行李と書いてアンリと読み、修行のこと。第二次世界大戦前の日本の軍隊では、弾薬や器材を積んだ輜重(しちょう)のことをいい、それを運ぶ部隊をも行李とよんだ。

[片岸博子]

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百科事典マイペディア 「行李」の意味・わかりやすい解説

行李【こうり】

荷物の運搬,日常衣類の収納などに使用されるかぶせぶたの箱。古くからあり,江戸時代には広く普及した。コリヤナギを麻糸で編んだ柳行李と,スズダケ,メダケを網代(あじろ)に編んだ竹行李がある。安価で弾力に富み通気性があるので,近代に入っても家庭の必需品であった。
→関連項目スズタケ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「行李」の意味・わかりやすい解説

行李
こうり

もとは使者の意。梱とも書く。タケまたはコリヤナギの枝で編んだ一種の籠で,主として衣類を収納したり運搬する場合に用いた。前者を竹行李,後者を柳行李という。非常に広く使用されていたが,最近は衣類の収納にはプラスチック製や紙製の衣裳箱,旅行などの際の運搬にはトランク,スーツケースが多く用いられ,行李の使用はほとんどない。

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とっさの日本語便利帳 「行李」の解説

行李

日本では竹や柳で編んだ収納用の箱。中国では旅行用カバンなど手荷物をいう。「行李処」は手荷物取扱所。

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