飲食用具の一つで、飲料水あるいは酒などを入れて携帯する用具。携帯するという点で、同じ飲料容器でも瓶子(へいじ)や銚子(ちょうし)と区別される。
もともと青竹を切って、節と節の間に飲料を入れたのが原型である。類似のものにひょうたんがあるが、これは別に区別された。その形状から単に「筒(つつ)」、または「小筒(ささえ)」とよばれた。室町時代初期に成立したとみられる『庭訓往来(ていきんおうらい)』2月状には、花見の誘いに「破籠(わりご)・小筒等は是(これ)より随身すべし」と記し、当時広く使われていたことがわかる。一説には、竹の筒であることから竹の葉(笹(ささ))の枝の縁により「ささえ」と読んだといい(『貞丈雑記(ていじょうざっき)』)、また一説には酒(ささ)を入れるので「酒の家」の意であるという(『輪池拾葉(りんちしゅうよう)』)。
江戸時代には、おもに「吸筒」、または現在と同じく「水筒」と記されることが多いが、いずれの場合も「すいづつ」と読まれた。古来からの青竹製も簡便さから盛んに使われたが、一方では行楽、芝居見物などのために、漆塗り、家紋入り、彩色などの技巧を凝らしたもの、あるいは円型、亀の甲型、将棋の駒(こま)型など、従来の型から逸脱したものが種々出てきた。明治以降も、たとえば日露戦争時の『陸軍陣中衛生心得』には「出発の際は必ず水筒を充(みた)すべし」と記し、「水筒」に「すいづつ」と振り仮名を打っている。したがって、現在のとおり「すいとう」とよぶようになるのは、かなり遅いことであったらしい。
[森谷尅久]
飲料水を携帯するための容器。登山やピクニックなどの行楽,軍隊の行軍用に使用される。古くは自然物を利用し,中国やヨーロッパでは皮革類の小袋を,中央アジアの遊牧民族は皮革や獣の内臓を,東南アジア地域では竹筒を用いていた。現在も実用にされているものが多い。日本では竹筒やひょうたんを用いたが,飲料水よりむしろ酒を入れることが多かった。竹筒は竹を1節分輪切りにし,その一方の端に飲み口の穴をあけた簡単なもので,〈吸筒(すいづつ)〉〈ささえ〉〈さすえ〉の名でも呼ばれ,使い捨てにされた。江戸時代になると遊びの要素も加わり,きんちゃく型,ナス(茄子)型など奇抜な形の漆器が作られた。アルミ製水筒の生産は,1897年(明治30)東京砲兵工場で始まった。現在ではアルミ製,プラスチック製のほかに断熱材を入れた保温水筒,携帯用魔法瓶等が作られている。
執筆者:南本 珠己
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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