酒を入れて杯に注ぐための容器。瓶形を呈して頸(くび)がすぼまり,口も比較的小さい。得利とも書き,〈とっくり〉とも呼ぶ。〈とくり〉の語源については,酒を注ぐときの音を写したなどと説かれるが,定かではない。形態的には水瓶(すいびよう)や瓶子(へいし)などから成立したものと思われる。室町後期から〈とくり〉の名が見られるが,《節用集》が〈土工李(とくり)〉としたり,〈陶〉の字をあてて〈とくり〉と読ませているように,陶磁器のものをいったようで,同形の錫(すず)製品は〈すず〉と呼んでいる。《毛吹草》(1638)は備前の名産として伊部(いんべ)(備前焼)の徳利を挙げ,《和漢三才図会》(1712)は中国・朝鮮産のもの(必ずしも酒器ではない)が最も良く,伊部がそれにつぎ,伊万里(いまり)もまた良いとしている。一般的なものは,1~2合入りの燗(かん)徳利と,1升あるいは5合入りの貧乏徳利で,前者は猪口(ちよこ)との組合せで独酌や内輪の小宴などに,後者は小買いをする客に対する酒屋の貸し容器として利用された。《守貞漫稿》が〈江戸近年式正ノミ銚子ヲ用ヒ,略ニハ燗徳利ヲ用フ〉といっているように,燗徳利と猪口の組合せが普及したことは,日本人の飲酒行動が銚子,木杯,金銀杯などを用いた酒盛りの社会的・儀礼的な束縛を脱し,純粋に酒を楽しむ自由を獲得したことを示している。
→酒器 →銚子
執筆者:西村 潔
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
酒器の一種で、酒を入れて杯(さかずき)に注(つ)ぐための容器。おもに陶磁器でつくられている。「とっくり」ともいう。口径が狭く、胴の膨らんだ背の高い形のものが多い。室町時代中期からこの名がみられ、得利、徳裏、陶などの字もあてられた。徳利は、初めは酒のほか、しょうゆや酢などを入れる容器にも用いられたが、現在では酒を入れる容器とされている。徳利の語源については、一説に、徳利は備前(びぜん)焼でつくられたものが多く、備前焼は安価で堅固であるところから徳利であるという意味で名づけられたというが、さだかではない。
徳利の大きさは、3升(約5.4リットル)から1合(約0.18リットル)用までさまざまであった。このうち、5合(約0.9リットル)から1升(約1.8リットル)入りの徳利は酒店の貸容器として用いられ、これを俗に貧乏徳利とよんでいた。一方、1~2合入りの小形の徳利(燗(かん)徳利)は、ちょことの組み合わせで、酒を間接的に温めて飲む習慣の普及した大正初期まで広く用いられた。その後2合徳利はしだいに廃れ、1合入り、さらにはそれより小形のものが用いられるようになっている。
[河野友美]
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[日本の酒器]
酒を飲むために用いられる容器の総称。口に運んで飲むための杯やグラス,それらに酒を注ぐための銚子(ちようし)や徳利(とくり∥とつくり)が主要なものであるが,杯を置く杯台,杯を洗うための杯洗(はいせん∥さかずきあらい),酒を貯蔵または運搬するために用いられる甕(かめ)や樽をも含む。ここでは酒を注ぐ器を中心に記述するが,日本でも古く土器のほかに酒器として用いられたものに,ヒョウタンやミツナガシワ(カクレミノあるいはオオタニワタリとされる)のような植物の実や葉,あるいは貝殻のような自然物があった。…
…室町後期から〈とくり〉の名が見られるが,《節用集》が〈土工李(とくり)〉としたり,〈陶〉の字をあてて〈とくり〉と読ませているように,陶磁器のものをいったようで,同形の錫(すず)製品は〈すず〉と呼んでいる。《毛吹草》(1638)は備前の名産として伊部(いんべ)(備前焼)の徳利を挙げ,《和漢三才図会》(1712)は中国・朝鮮産のもの(必ずしも酒器ではない)が最も良く,伊部がそれにつぎ,伊万里(いまり)もまた良いとしている。一般的なものは,1~2合入りの燗(かん)徳利と,1升あるいは5合入りの貧乏徳利で,前者は猪口(ちよこ)との組合せで独酌や内輪の小宴などに,後者は小買いをする客に対する酒屋の貸し容器として利用された。…
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[日本の酒器]
酒を飲むために用いられる容器の総称。口に運んで飲むための杯やグラス,それらに酒を注ぐための銚子(ちようし)や徳利(とくり∥とつくり)が主要なものであるが,杯を置く杯台,杯を洗うための杯洗(はいせん∥さかずきあらい),酒を貯蔵または運搬するために用いられる甕(かめ)や樽をも含む。ここでは酒を注ぐ器を中心に記述するが,日本でも古く土器のほかに酒器として用いられたものに,ヒョウタンやミツナガシワ(カクレミノあるいはオオタニワタリとされる)のような植物の実や葉,あるいは貝殻のような自然物があった。…
…注口(つぎくち)が両側にあるのを両口(もろくち),片側にあるのを片口といい,いずれも長柄をつけてあった。酒をつぐ器の代表的なものだったため,別系統の徳利が普及するにともない,徳利をもこの名で呼ぶことが多くなった。〈銚〉はもともと〈鍋〉の意で,《和名抄》は銚子を〈さしなべ〉〈さすなべ〉と読んでいる。…
※「徳利」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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