コルターサル(英語表記)Julio Cortázar

改訂新版 世界大百科事典 「コルターサル」の意味・わかりやすい解説

コルターサル
Julio Cortázar
生没年:1914-84

アルゼンチンの小説家。ベルギーブリュッセル生れで,帰国後もフランス語の教師を務めたりしたが,1951年にパリに亡命ユネスコの翻訳官の職に就く。フランス文学やイギリス文学に精通し,ジッドポーなどの翻訳が多数ある。代表的な作品は,ボルヘス系譜につながる幻想的な短編から成る《遊戯の終り》(1956),《秘密の武器》(1959),《クロノピオとファーマの物語》(1962),《すべての火は火》(1966)。また,パリとブエノスアイレスを彷徨する2組の男女の生を多義的な読みの可能な文体で綴った《石蹴り遊び》(1963)や現代のラテン・アメリカの状況に怒りと苦悩を抱く男の内面をコラージュ形式で浮かび上がらせた《マヌエルの書》(1975)などの長編も高く評価されている。さらに《八十世界一日一周》(1966),《最終ラウンド》(1969)といったエッセー集には,映画,ジャズ,絵画その他にわたる彼の広範な教養をうかがうことができる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のコルターサルの言及

【ラテン・アメリカ文学】より

… 植民地的な遺制からの脱却の可能性を示すことによって,ラテン・アメリカの人々,とりわけ知識人らの精神を高揚させたキューバ革命の成功と符節を合わせたかのように,60年代の初めから次々に傑作,秀作と呼ぶべきものが発表されだした。アルゼンチンのペロン政権下の暗い時代の中での不条理な愛の葛藤を描いたサバトErnesto Sábato(1911‐ )の《英雄たちと墓》(1961),廃虚に等しい工場を舞台にして生の無意味を追究したウルグアイのオネッティの《造船所》(1961),フランス大革命のカリブ地域に及ぼした影響をたどったキューバのカルペンティエルの《光の世紀》(1962),メキシコ革命で成り上がった男の臨終の床の意識をなぞったフエンテスの《アルテミオ・クルスの死》(1962),実験的なスタイルで根なし草的な生を浮かび上がらせたアルゼンチンのコルターサルの《石蹴り遊び》(1963),ペルーの社会的現実を全体小説のかたちでとらえたバルガス・リョサの《緑の家》(1966)。そして,架空の町マコンドの創建と滅亡に仮託して新世界の歴史を描いたコロンビアのガルシア・マルケスの《百年の孤独》(1967)。…

※「コルターサル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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