アメリカの経済学者。マサチューセッツ州ボストン生まれ。1960年にタフツ大学を卒業し、シカゴ大学で1963年に経済学修士号、1964年経済学博士号(Ph.D.)を取得。一貫してシカゴ大学で教鞭(きょうべん)をとり、1968年から同大学教授。専門はファイナンス理論で、金融経済学など研究は多岐にわたる。「現代金融理論の父」とよばれる経済学界の重鎮である。戦争、災害、企業業績などあらゆる情報が市場を通じて瞬時かつ合理的に株式や債券などの資産価格に反映されるという「効率的市場仮説」を提唱し、2013年にノーベル経済学賞を受賞した(シカゴ大学のラース・ハンセン、エール大学のロバート・シラーとの共同受賞)。ファーマの理論に基づき、株価指数の値動きに連動するインデックス型投資信託が開発され、自身も投資ファンドのコンサルタントを務めている。
20世紀初頭、フランスの数学者ルイ・バシュリエLouis Jean-Baptiste Alphonse Bachelier(1870―1946)は株価が不規則に変動するというランダムウォーク理論を唱えたが、その後忘れられていた。1960年代にファーマはポール・サミュエルソンとともに、市場参加者は入手可能なすべての情報を迅速、効率的に取り入れることで資産価格が決まるとの効率的市場仮説を提唱。このため資産価格はランダムに変動し、短期的な資産価格を予測することはできないとの結論に達した。一連の研究は1970年の論文「Efficient Capital Markets : A Review of Theory and Empirical Work」にまとめられた。理論の提唱だけでなく、資産価格の変動の検証にも積極的で、1973年にはジェームス・マクベスJames D.MacBethとともに、資産価格モデルの統計的妥当性を調べる「ファーマ‐マクベス回帰Fama-MacBeth regression」という分析手法を開発。1993年にはアメリカの経済学者ケネス・フレンチKenneth Ronald French(1954― )とともに、資産価格の変動を企業規模の差や簿価時価比率などで説明する「ファーマ‐フレンチの3ファクターモデル」(Fama-French 3-factor model)を提唱。2013年ノーベル経済学賞を同時受賞したラース・ハンセンの一般化モーメント法Generalized Method of Moments(GMM)開発へ道を開くことになった。なお同年のノーベル経済学賞では、投資家の合理性を前提とするファーマと、これに疑問を呈するシラーが同時受賞しており、立場の異なる学者の同時受賞はきわめて異例である。
[矢野 武 2021年5月21日]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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