改訂新版 世界大百科事典 「コープの法則」の意味・わかりやすい解説
コープの法則 (コープのほうそく)
Cope’s rule
生物は系統発生の過程で,からだの大きさが小型から大型へ一定の限界まで増大する傾向があることを述べたもの。もともとは脊椎動物の場合に認められた現象であるが,無脊椎動物や植物についても同様なことが認められるようになった。19世紀末のアメリカの古生物学者E.D.コープの説(1880)とされているが,J.B.ラマルクも《動物哲学》においてこのことを進化の第1法則として述べており,またコープと同時代のフランスの古生物学者デペレC.Dépéretも同様の考えをもっていた。コープは,この説を定向進化や獲得形質の遺伝と結びつけて考えたが,現在ではこの現象は,生理や運動に対する適応や特殊化としてとらえられている。したがってこの法則は一般的ではなく,また定向進化的なものでもない。進化系列において,先祖型は小型で特殊化していないが,後の世代のものほど大型化して特殊化する。しかし最後のものが最大のものとはならない。コープの法則は,先祖型が小型で特殊化していないということを明らかにした点で,進化現象を正しく記述したものといえる。
執筆者:亀井 節夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報