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定向進化 ていこうしんかorthogenesis; determinate evolution

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

定向進化
ていこうしんか
orthogenesis; determinate evolution

直進 (直達) 進化ともいう。生物の進化において,たとえば体の大型化,貝殻の巻込み方の増大などの傾向を保ったまま進み続けるようにみえる一定方向性があるということ。ウマやゾウの体躯,ウマの足指が中指のみの大型化に向う現象その他,動物化石の年代順の比較によって多くの例があげられてきた。 T.アイマー,E.コープ,H.オズボーンなど,20世紀初頭までの古生物学者に定向進化の見方を重視するものが多く,その解釈としてしばしば内在する衝動のようなものが想定された。しかし,G.G.シンプソンは主としてウマについて,見かけ上の定向的な変化も自然淘汰によって説明できることと,体の大型化に関しても途中から小型化に向っている系統もあるなど,一概にはいえないことを論じて,生命力的な内因による定向進化の考えを否定した。現在では,化石の系列がある期間にわたって一定の傾向をもって配列できるとき,便宜的に「定向進化的な傾向」というような表現を使うことはあるが,何か内発的な力が進化を一定方向に推し進めるとの意味では,大部分の生物学者に認められていない。

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デジタル大辞泉の解説

ていこう‐しんか〔テイカウシンクワ〕【定向進化】

生物の進化は一定の方向性をもっているという考え。化石を年代順に並べると形態に一定の方向に変化がみられることから考え出されたもの。

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百科事典マイペディアの解説

定向進化【ていこうしんか】

生物のある形質が一定の方向へ進化し続けること。化石によると,ウマやゾウでは形の大型化がみられ,一方,ウサギやネズミでは小型化の傾向がある。E.D.コープやT.アイマーらはこのような進化の傾向が生物自体に内在する力によって起こると考え,定向進化説を唱えた。
→関連項目進化論

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世界大百科事典 第2版の解説

ていこうしんか【定向進化 orthogenesis】

化石が示す生物の進化系列にはしばしば形態や大きさの時間的変化に方向性が認められる。コープE.D.Cope,アイマーT.Eimerら19世紀末から20世紀初頭のかなり多くの進化学者(特に古生物学者)は,進化は一般に非適応的なもので,生物自体に内在する力によってあらかじめ定められた方向に形態の変化が起こると考えた。これが定向進化説orthogenesis theoryである。現代の進化学者の多くは現象と学説とを区別し,方向性をもつ進化directional evolutionは認めるとしても,神秘的な要因を仮定するような定向進化説は支持しない。

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大辞林 第三版の解説

ていこうしんか【定向進化】

ある動物群の形態が一定の方向に向かって変化するようなとき、その要因は生物に内在するとする学説。方向性は生物に内在するという点で自然淘汰説と根本的に対立し、今日では根拠の薄弱な説として批判される。定向進化説。
化石に実際に見られる、方向性をもった進化現象。古生物学や比較解剖学によって指摘され、自然淘汰説によって解釈できるとされる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

定向進化
ていこうしんか
orthogenesis

生物のある系統群に属する化石を産出年代順に並べると、それらの形態的特徴に一定の方向性をもった変化がしばしば認められる。このような変化の傾向を定向進化という。直進進化あるいは指向進化などともいう。
 このことばはアイマーT. Eimerが1885年に提唱した。その後、古生物学者のコープE. D. CopeやオズボーンH. F. Osbornなどによって展開された進化学説をとくに定向進化説という。これは、進化の定向性が自然選択(淘汰(とうた))説では説明できないとして唱えられたもので、そうした方向性になんらかの内在的な「力」を想定している。そのような見方は、もともとは、「進化」を永遠の大いなる完全化の過程もしくは運動とみる理神論や目的論に普遍的であった。ラマルクJ. B. Lamarckの単純から複雑への連続自然発生の考えはその典型とされるし、ダーウィンの『種の起原』を評したフォン・ベーアvon Baerもこうした目的論の擁護を表明していた。さらに、ネオ・ラマルク主義を掲げ、体の増大化を強調した「コープの規則」、オズボーンの唱えたアリストゲネシス、ベルグL. Bergのノモゲネシスから、哲学者ベルクソンH. Bergsonのエラン・ビタール、そしてテイヤール・ド・シャルダンTeilhard de Chardinのオメガ原理なども、説明の仕方に差はあるが、目的論的定向進化説の系譜をなすだろう。
 現在ではこれらの定向進化説は一般的には受け入れられていない。しかし、大進化的時間尺度におけるなんらかの形態上の諸傾向は、事実としては広く認められている。当初考えられていたほど単純ではないにしても、ウマの指の短化や歯の複雑化、ゾウの牙(きば)や鼻の伸長、エルクジカの角(つの)の巨大化などが具体例としてよく引用される。そのような傾向はどのようにして生じたのかがいま改めて問い直されている。というのは、これは、従来漸進説の立場で、恒常的な環境条件と選択圧の方向性を仮定して、やや安易に説明されてきた、もしくは、その傾向自体が厳密でないとして無視されてきた。それに対して、1970年代以降、断続説(区切り平衡説)が提唱され、種形成の分岐が相反する方向に確率的に均等に生じるとしても種の絶滅率に差(スタンレーS. M. Stanleyのいう種選択)があれば定向性を説明できるし、また新種産生率そのものに差があれば結果は同じになるという。これは漸進説‐断続説論争の主要な争点とされるからである。[遠藤 彰]

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