日本大百科全書(ニッポニカ) 「コーラス・グループ」の意味・わかりやすい解説
コーラス・グループ
こーらすぐるーぷ
Corus Group
イギリスの鉄鋼メーカー。1999年10月、イギリス最大の鉄鋼会社ブリティッシュ・スチールとオランダ最大手のホーゴーバンKoninklijke Hoogovensが合併して設立された。世界有数の鉄鋼会社の一つであったが、2007年にインドのタタ鉄鋼に買収され、2010年にタタ製鉄ヨーロッパと改称した。
1990年代後半、鉄鋼業の市場環境は厳しく、ヨーロッパでは大規模な鉄鋼企業の合併が進展した。販売組織や生産設備の合理化、効率化の追求がますます重要となったのである。そこで、イギリスの鉄鋼企業をほぼ統合していたブリティッシュ・スチールは、合併先を海外に求めることになり、1999年オランダのホーゴーバンと合併するに至った。
合併相手のホーゴーバンはオランダのハーグで1918年に設立された鉄鋼企業で、オランダの鉄鋼輸入依存を緩和するために創設された。同社の資本は、民間企業、個人投資家、オランダ政府、およびアムステルダム市の出資に負っていた。1960年代にアルミ事業に参入して業容を拡大、1987年にアメリカのカイザー・アルミニウム社のヨーロッパ業務を買収し、ヨーロッパ有数のアルミニウム企業となった。合併前の同社の売上高は49億ユーロ(約34億ポンド)に上り、670万トンの粗鋼生産、42万9000トンのアルミ製品の生産を誇っていた。
両社の合併によって発足したコーラス・グループは、粗鋼生産量で当時ヨーロッパ最大、世界第3位の地位に浮上した。合併後、供給過剰による鉄鋼価格の下落、アルミニウム・メーカーの世界的な再編を背景に、コーラス・グループは工場閉鎖や1万人を超える人員削減を進め、2002年フランスのペシネー(現、リオ・ティント・アルキャンRio Tinto Alcan, Inc.)にアルミ事業を売却して同事業から撤退、鉄鋼事業に経営資源を集中した。コーラス・グループの2001年の売上高は76億9900万ポンド、鉄鋼生産量は1800万トン、従業員数は5万2000人であった。
[安部悦生]
『安部悦生著『大英帝国の産業覇権――イギリス鉄鋼企業興亡史』(1993・有斐閣)』▽『Heidrun AbromeitBritish Steel ; An Industry between the State and the Private Sector(1986, St. Martin's Press, New York)』▽『G. F. Dudley, J. RichardsonPolitics and Steel in Britain, 1967-1988 ; The Life and Times of the British Steel Corporation(1990, Ashgate Publishing Company, Hampshire)』