ゴルテュン法典(読み)ゴルテュンほうてん

改訂新版 世界大百科事典 「ゴルテュン法典」の意味・わかりやすい解説

ゴルテュン法典 (ゴルテュンほうてん)

エーゲ海クレタ島の中央南部,古代ギリシア都市ゴルテュンGortynの遺跡より出土した前5世紀の大碑文。ローマ時代の小劇場の湾曲した内壁の一部に刻まれ,現在もそのままの形で保存されているが,本来この壁面は,ギリシア時代の法廷の建物に属していたと推定されている。碑文は12欄columnから成り,各欄約55行,各行平均20字強を数える。親族相続法を中心に,刑法,民事訴訟法,債権・物権法にかかわる事項をも交えた法律を刻み,その規模,規定の多様性とある種のまとまりによって〈ゴルテュン法典〉と通称される。現存ギリシア碑文のなかで,最大の規模を誇る一つであるだけでなく,最盛期ギリシアの社会・経済・法制の諸相,ことに家族・相続の実態を知るうえに不可欠の史料として,その価値はすこぶる高く,1880年代より今日にいたるまで,碑文学・歴史学の両面からおびただしい量の研究が蓄積されている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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