改訂新版 世界大百科事典 「サキシマハマボウ」の意味・わかりやすい解説
サキシマハマボウ
portia-tree
Pacific rose-wood
Thespesia populnea(L.)Saland.ex Corr.
熱帯域の海岸に広く見られるアオイ科の常緑小高木。枝はよく茂り,10m余りの高さになる。葉は基部に早落性の托葉のある長い葉柄を有し,葉身は革質,円卵形で基部は心形となり,ポプラの葉に似ている。葉腋(ようえき)から径5~8cmほどの黄色5弁の花を出す。花の底部は紫紅色をしているが,夕刻閉花するときになると全体がその色に染まる。熱帯域では周年開花する。果実はやや扁平となった球形で,径2~3cm,有毛の種子を有し,海水に浸っても種子の発芽力はなくならない。海流により散布され,アフリカから太平洋諸島まで広く分布する。アメリカの熱帯域にもあるが,それは人間による導入と考えられている。緑陰樹として街路や公園に植栽され,樹皮の繊維は強く,ロープなどに利用される。また若芽は花序とともに食用にされることもある。材は強く,心材は暗赤色で,所によっては建築材などに利用され,こすり合わせるとバラのような香りがする。
執筆者:堀田 満
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報