翻訳|rope
細い繊維を集めて左撚り(より)をかけて単糸(ヤーン)にし,これを数本ないし数十本集めて右撚りをかけて子縄(ストランド)にし,ストランドを三つ,四つ,または八つ撚り合わせるかまたは組むことによって作った長い繊維索。綱,縄,ひも(紐)はだいたいの大きさで繊維索を分別したもので,狭義にロープは綱をさす。一般に綱は単糸が複数本の子縄からできているもの,縄は1本の単糸の子縄から成るものをいう。ひもは直径8mm以下の細い繊維索をさす。ワイヤロープは鋼線を撚り合わせたもの(麻繊維を芯とすることが多い)である。ストランドの1回の撚り程をリードと呼ぶ。古来どの民族でも手近の繊維や糸類を用いてロープを作ってきた。アサ,ワタ,わら,シュロ,イグサなどの繊維類,ウシ,トナカイ,アザラシの皮などの皮革類,ブドウ,トウ,フジ,クズなどのつる類が材料として用いられた。
天然繊維ではマニラアサManilahempとサイザルアサsisal hempがよく使われる。マニラアサはフィリピン,インドネシア,中央アメリカなど熱帯地方に産するバショウの1種の葉柄から採った繊維であって,各単繊維の中心部は中空であるので目方が軽い。したがってマニラロープは,水に入れても浮く特性をもち,かつ耐海水性に優れている。フィリピンが世界の約9割を生産し,ダバオのアサは世界的に有名である。サイザルアサは中央アメリカ,南アメリカ,アフリカ,インドネシアに産するリュウゼツラン科の植物の葉の中にある繊維を採ったものである。サイザルアサは長さと太さはマニラアサと変わらないが,強力は弱く,硬いので,ロープに使用しても屈曲性に乏しく使いにくい。サイザルアサは陸上用綱索の材料としておもに使用される。そのほか,タイマhempを原料として白麻ロープおよびタールロープが作られる。綿ロープには良質の純綿糸が用いられる。とくに指定しないときは,20番手(30テックス)のZ(左)撚りの綿糸が使われる。合成繊維の発達により,ビニロン,ナイロン,ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリエステルのマルチフィラメント糸,モノフィラメント糸および紡績糸がロープ材料として用いられることが多く,天然繊維を圧倒している。最近,アラミド繊維がその高強力高弾性率を生かして,海洋用ロープに使用されはじめた。
麻繊維の場合,まず麻梳(まそ)機によって繊維を引きそろえてスライバーを作る。次に,製糸機でスライバーを引っぱりながら撚りをかけて単糸とし,数本または数十本の単糸を子縄機にかけて得られるストランドの3本または4本を綱打機にかけ,ロープを得る。麻ロープはとくに指定のないときは三つ撚りであり,ストランドのヤーン数はロープの太さにより,たとえば直径4mmのとき2ヤーン,直径20mmのとき16ヤーンというように規定されている。これによってロープの質量と引張強さがおのずと規制されるわけである。ナイロンやビニロンのような合成繊維からのロープは三つ打ちまたは八つ打ちで作られる。八つ打ちロープは,Z撚りストランド4本とS撚り(右撚り)ストランド4本をそれぞれ2本ずつ引きそろえて,図に示すように,交互に組み合わされて作られる。ビニロンロープはとくに必要あるときに熱処理を施せばよいが,ナイロンとポリエステルは撚りをかけただけでは元に戻るので,ロープの撚りを安定化させ型くずれを防ぐために,ロープを打ちあげた後で110℃で熱処理される。ポリエチレンロープとポリプロピレンロープはとくに熱処理はしなくてよい。マニラロープとサイザルロープは油で,そしてタールロープは松根タールで加工される。綿ロープには白打綿ロープと黒鉛引綿ロープがあり,後者は天然黒鉛および少量のロジンを混ぜたパラフィンを塗布される。合成繊維ロープは染色または樹脂加工されることがある。また,太さの異なる子縄を2本ないし3本撚り合わせたものを,さらに3本または4本撚り合わせたロープは,たとえば2・3子,2・4子,3・3子,3・4子構造といい,岩糸,延縄(はえなわ)と呼ばれる。アラミド繊維でロープを作る際,芯撚りポリエステルストランド,アラミドストランド,および樹脂加工ポリエステルストランドのように3~4層の異なるストランドを組み合わせてロープとすることが試みられている。これは繰り返し荷重のかかるロープ内のアラミドストランドの激しい摩擦による摩耗を防ぐためである。
各種ロープの質量と引張強さはJISにより規定されているので,その一部を表に示す。ナイロンロープの引張強さが最も大きく,ポリエステルロープがつづく。ポリプロピレンロープは引張強さは前2者に劣るが,水より軽いという特性をもつ。合成繊維ロープは腐敗に強いという特徴をもつが,欠点として比較的耐熱性に欠ける。ナイロンロープなどはロープの軸心と直角方向の摩擦に弱い。また,合成繊維ロープの伸びの大きいことは欠点としてあげられるが,特殊用途には高強力高弾性繊維のアラミドの混撚(こんねん)によって解決されようとしている。天然繊維は腐敗し,また比較的強度も低いが,伸びが小さいという特徴ももつ。
(1)海洋用に引綱,ボートつり綱,サケ・マスの流し刺網用岩糸,マグロ漁の延縄,底引網漁業の引網綱,係船用など,(2)陸上用に建築現場の安全索,登山用ザイル,農業用一般,輸送トラックの荷掛綱,洗濯用ひも,各種ネットのつり綱など,日常生活や産業用に多くの用途がある。
執筆者:瓜生 敏之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
繊維あるいは鋼線を撚(よ)り合わせた産業用の綱のことで、綿、麻、合成繊維でつくる繊維ロープと、繊維の芯(しん)綱を中心にして鋼線(鉄または鋼)を撚り合わせたワイヤロープとがある。繊維ロープは普通、単糸(ヤーン)を数本~数十本あわせて左撚り(Z撚り)にして子縄(ストランド)をつくり、子縄の3~4本を右撚り(S撚り)にしてロープとする。最近では、強度もあり腐敗にも強い合繊ロープが多く使用されるようになった。用途としては漁業用、船舶用、林業用、鉱山用、建築現場用、登山用その他がある。ワイヤロープは数本~数十本の針金を撚り合わせて子縄をつくり、繊維の芯綱を中心にして、普通6本の子縄を撚り合わせてロープをつくる。子縄の撚り方向とロープの撚り方向との関係が逆方向のものを、普通撚りとよぶ。ワイヤロープはとくに大きな引っ張り力に耐える特長があるので、重い物を引き上げるときなどに使用する。
[額田 巌]
機械工業では主として巻掛伝動に用いる。三つ撚(よ)りまたは四つ撚りの麻ロープ、綿ロープ、および六つ撚りのワイヤロープとが主として用いられる。伝達力が小さいときには円形断面の皮ロープも用いられる。綿ロープは柔軟で寿命も長く、伝動用としてもっとも適当である。屋外で使用するのには風雨に強い麻ロープが適している。綿ロープ、麻ロープを使用するときにはロープ車の溝の斜面で接触するようにし、溝の角度は45度から60度とする。伝達力の大きい場合には、大きな引張力に耐えるワイヤロープを使用する。ロープの掛け方は、必要数だけのロープを別々につくり調車(しらべぐるま)上に並べて掛ける各個式と、1本の長いロープを必要な回数だけ両車間に往復して掛け、最後の端を最初の端に結び付け輪形にする連続式とがある。
[中山秀太郎]
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… いわゆる〈セミ・ドキュメンタリー〉の手法を用いたスリラー映画も流行し,FBIの記録にもとづく《Gメン対間諜》(1945),実際の殺人事件を描いた《影なき殺人》(1947),集団脱獄事件を描いた《真昼の暴動》(1947),殺人犯の追跡を描いた《裸の町》(1948),FBIの記録による《情無用の街》(1948)などがつくられ,ルイ・ド・ロシュモントLouis de Rochemont(1899‐1978)のセミ・ドキュメンタリー・スタイルのニュース映画《ザ・マーチ・オブ・タイム》(1935‐51)に示唆されたといわれるこれらの映画の傾向は〈ニュー・リアリズム〉ともよばれた。そしてヒッチコックは,展開される物語の時間と映画そのものの時間が一致する《ロープ》(1948)で,それまでの映画のつくり方の常識をひっくり返して全編をワン・カットで撮るという未曾有の実験を試み,スリラー映画流行の一つの頂点を示した。 テレビジョンの脅威にさらされて映画がワイド・スクリーンとカラーの時代を迎えた1950年代は,小さいモノクロのスクリーンになじんできたスリラー映画にとって,ある意味では試行錯誤の時代でもあったが,作家たちはいわばその卑屈なまでの暗い心情から,マッカーシー時代と冷戦下の政治的に緊張した雰囲気に結びついた《拾った女》(サミュエル・フラー監督,1953),《復讐は俺に任せろ》(フリッツ・ラング監督,1954),《キッスで殺せ》(ロバート・アルドリッチ監督,1955)などの傑作を生んだ。…
…一般に綱のことだが,日本では,とくに登山で氷壁や岩壁の登攀の際に,安全を確保するため体を結び合って行動するのに用いる綱を呼ぶことが多い。英語でロープrope。ザイルの使用はアルプス登山の黄金時代といわれた19世紀中ごろから盛んとなり,日本には大正末期,ヨーロッパの登山技術の導入期にとり入れられた。…
…一般に綱のことだが,日本では,とくに登山で氷壁や岩壁の登攀の際に,安全を確保するため体を結び合って行動するのに用いる綱を呼ぶことが多い。英語でロープrope。ザイルの使用はアルプス登山の黄金時代といわれた19世紀中ごろから盛んとなり,日本には大正末期,ヨーロッパの登山技術の導入期にとり入れられた。…
※「ロープ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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