日本大百科全書(ニッポニカ) 「させられ体験」の意味・わかりやすい解説
させられ体験
させられたいけん
自我の能動性の障害であり、自己の思考、意志、衝動、感情などが、他者によって操られていると感ずる体験をいう。作為体験ともいう。患者は「外から……される」とか「他人に……させられる」と、ありありと体験することが特徴的である。思考面でのさせられ体験はさせられ思考とよばれ、他人に考え「させられる」とか、自分の思考が干渉「される」と確信する。これらは統合失調症(精神分裂病)性の自我意識の障害とされ、ドイツの精神病理学者シュナイダーKurt Schneider(1887―1967)は、対話性幻聴、思考化声、妄想知覚と並んでこれを統合失調症の第一級症状とし、統合失調症の診断上、重要な症状とした。なお、本症状は英米では思考障害に分類されている。
[永田俊彦]