改訂新版 世界大百科事典 「サンベーヌ」の意味・わかりやすい解説
サンベーヌ
Sembène Ousmane
生没年:1923-2007
セネガルの作家,映画監督。ジギンショルに漁師の息子として生まれる。第2次大戦にはフランス軍セネガル狙撃兵として参戦。1948年マルセイユに渡り,波止場人足として港湾労働者組合運動に参加。56年自伝的小説《黒い沖仲仕》をフランス語で発表。以来現代のグリオ(語部)を自負し,社会派作家として活躍。1947年のダカール・ニジェール鉄道ストライキに取材した小説《神の森の木々》(1960),文盲ゆえにだまされる庶民の悲哀を描いた小説《為替》(1966。第1回黒人芸術祭文学賞),民族ブルジョアジーを痛烈に風刺した小説《ハラ》(1976),80年代政界の権力抗争から,20世紀のセネガルの歴史全体を照射した小説《帝国の最期》(1981)のほか,《セネガルの息子》(1957),《熱風(第一部 国民投票)》(1964),短編小説集《ボルタイック》(1962)などがある。一方,60年代から大衆芸術としての映画製作を志し,61年モスクワの映画学校に学ぶ。63年ダカールの車夫の日常を描いた《バロム・サレット》を製作。《黒人女》(1966)でカンヌ映画祭ジャン・ビゴ賞を得てアフリカ映画の第一人者となった。68年《為替》をウォロフ語,フランス語両版で映画化。《ハラ》(1976)は,その体制批判性のため検閲による削除をうけ,続く《チェド》(1977)は,サンゴール大統領在任中,セネガルでの上映を禁じられた。ウォロフ語の新聞を発行するなど,国語教育文化運動にも活躍している。
執筆者:元木 淳子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報