ザイツェフ則(読み)ザイツェフそく

改訂新版 世界大百科事典 「ザイツェフ則」の意味・わかりやすい解説

ザイツェフ則 (ザイツェフそく)

脱離反応によって生成するアルケンの構造を予測する経験則。セイチェフ則Saytzeff ruleともいう。1875年,ロシアのザイツェフA.M.Zaitsev(Saytzeff)により提唱された。ハロゲン化アルキル塩基との反応による脱ハロゲン化水素,あるいはアルコールに酸を作用させたときの分子内脱水反応において,脱離の方向に二つ以上の可能性がある場合には,置換基の最も多いアルケンが主生成物となるという規則。下の例に見られるように,二重結合に置換基が多いほうの構造異性体がいずれも主生成物となっている。いいかえれば,水素原子との結合が最も少ない炭素原子から水素が脱離しやすいことになる。

この経験則は,アルキル基によって置換された二重結合ほど超共役により安定になるという,アルケンの安定性を遷移状態にあてはめることにより説明されている。
ホフマン則
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

法則の辞典 「ザイツェフ則」の解説

ザイツェフ則【Saytzeff rule】

分野によっては英語読みのセイツェフ則*が通用していて,こう記してある辞典類も多いが,まだ昔ながらの呼称のほうが広く通用している.ハロゲン化アルキルの脱離反応においては,プロトン数の少ない β 炭素から水素が脱離したアルケンを優先的に与える.

出典 朝倉書店法則の辞典について 情報

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