改訂新版 世界大百科事典 「超共役」の意味・わかりやすい解説
超共役 (ちょうきょうやく)
hyperconjugation
メチル基CH3-などのアルキル基は元来はπ電子をもっていないが,アルキル基がベンゼン環その他のπ電子共役系に結合しているときには,あたかもπ電子をもっているかのような挙動を示す。この現象を超共役と呼ぶ。たとえば,プロピンCH3-C≡CH分子のCH3-Cの炭素原子間距離は1.46Åであり,通常のC-C一重結合の長さ1.54Åよりかなり短いが,これはCH3-Cの結合が超共役によって,多少二重結合性をもつためと理解される。分子の双極子モーメント,イオン化エネルギー,吸収スペクトル,反応性などにも超共役の効果がみられる。メチル基を例にとると,3個の水素原子を一つの疑似原子とみなし,各水素原子の1s軌道の線形結合で3種の疑似原子軌道をつくると,そのうちの二つがp軌道的性格をもつために超共役の現象が出現する,と分子軌道法の観点からは説明されている。
執筆者:黒田 晴雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報