しゃへい定数(読み)シャヘイテイスウ

化学辞典 第2版 「しゃへい定数」の解説

しゃへい定数
シャヘイテイスウ
shielding constant

電子系において,中心電荷の減少を見積もるパラメーター.多電子系の波動関数は水素類似の波動関数を用いる.ある電子に注目すると,その電子が中心核から受ける引力は,ほかの電子によって中心核電荷がしゃへいされるので小さくなる.J.C. Slaterはこの中心電荷の減少を見積もる経験則を提案した.すなわち,Slaterのしゃへい定数σは次のように決められ,有効核電荷 Z *Z - σ(Z原子番号)である.注目する電子がs軌道またはp軌道にあるとき,
(1)その電子よりも高い主量子数 (n)をもつ電子について0,
(2)同じnの核電子について0.35.ただし1s軌道については0.30,
(3)(n - 1)の電子についてそれぞれ0.85,
(4)(n - 1)より深い電子について1.00,また注目する電子がd軌道あるいはf軌道にあるとき,
(5)その電子よりも高いnにある電子について0,
(6)同じnにある電子について0.35,
(7)(n - 1)およびそれより低い電子について1.00,
とした.たとえば,F(1s22s22p5)の2p軌道にある電子について,しゃへい定数は,1s電子から2 × 0.85,2s,2p軌道にある電子から,6 × 0.35で,その和σ = 3.80,有効核電荷 Z * は9 - 3.80 = 5.20となる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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