日本大百科全書(ニッポニカ) 「シャンスラード人」の意味・わかりやすい解説
シャンスラード人
しゃんすらーどじん
Chancelade man
南フランス、ドルドーニュのペリグー市の北東6キロメートルにあるシャンスラードの岩陰(いわかげ)遺跡から、1888年に出土した後期旧石器時代人骨。発見者はM・ハーディら。寒地性動物化石およびマドレーヌ文化遺物を伴出した。ほぼ全身的な壮年男性人骨である。これを調べたL・テステューは、本人骨は全般的にはクロマニョン人に似るが、長頭で、頬骨(ほおぼね)が大きく、下顎(かがく)枝が厚いという点で、エスキモーに似ているとした。このことは氷河時代のヨーロッパにエスキモー様人類が生息したということになり、シャンスラード人種とよばれた。しかし、この標本は保存が悪く、最近の研究では、それは誤認・誇大化していると考えられ、その名は古人骨発見史の一隅にとどまるだけである。
[香原志勢]