日本大百科全書(ニッポニカ) 「シュテークミュラー」の意味・わかりやすい解説
シュテークミュラー
しゅてーくみゅらー
Wolfgang Stegmüller
(1923―1991)
オーストリアの科学哲学者。インスブルックに生まれ、インスブルック大学を卒業。1958年以降ミュンヘン大学教授。ルドルフ・カルナップの影響を強く受け、当時の西ドイツにおける科学哲学運動の推進者として活躍。シュテークミュラーによれば、いかなる学問分野においても思惟(しい)の自己弁明は論理的に不可能である。科学にとって形而上学(けいじじょうがく)がかならずしも無意味でないとみなされたりするのはそのためである。とはいえ形而上学は真に科学の基礎たりえない。なぜなら形而上学がたてる問いもまた同様の理由で真偽決定不可能だからである。おもな著作に『現代哲学の主潮流』(1952)、『形而上学―科学―懐疑』(1954)、『真理問題と意味論の理念』(1957)、『不完全性と決定不可能性』(1959)および『科学理論と分析哲学の諸問題と諸成果』(1969~1970)、またカルナップとの共著『帰納論理学と確率』(1959)などがある。
[遠藤 弘]
『中埜肇・竹尾治一郎監訳『現代哲学の主潮流』全5巻(1978~1995・法政大学出版局)』