イデーともいう。理性によって得られる最高の概念をさす。事物の永遠の原型としての超感覚的な真実在を意味するプラトンのイデアideaが語源である。中世神学ではイデアが神の知性のうちにあるとされた。近世初頭にデカルトとロックが心理的な意識内容をさすために用いてからは、“idea” “Idee”は「観念」(アイデア、イデー)をも意味するようになり、今日ではこの語法が優勢を占めている。しかしカントは、形而上(けいじじょう)学の本来の対象である魂・世界・神の三つの純粋理性概念を理念(イデー)とよんで原義を回復し、超越的、価値的な意味を与えた。理念は、意識内容一般をさす表象と、主観に本来備わって経験的対象の構成に用いられる純粋悟性概念(範疇(はんちゅう))とから区別され、悟性認識に最高の統一を与える理性認識の形式とされた。ただし経験においては、対象構成のために用いられてはならず、認識を規制する原理にとどまる。ヘーゲルでは、理念はその対象と統一され、論理・自然・精神として自己展開する実在的な理性概念であるとされる。
[藤澤賢一郎]
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…感覚されうる個物の原型・範型としての形相,主観的な表象ないし観念の両義のほか,カント以降のドイツ哲学では理性概念として独特の意義づけをこうむる。20世紀初頭,桑木厳翼は理性観念すなわちイデーを〈理念〉と訳した。カントは理性が現象界を超越する傾向は認めるが,理論的認識を感性の直観形式(時間,空間)と悟性概念(カテゴリー)との及びうる現象界に制限し,理性の構想する概念すなわち理念は,〈あたかも〉実在する〈かのように〉全現象界に最高の統一を与えこれを統制する仮説であるとし,旧来の形而上学の主題の神・不死・自由をこのような理念とみなした。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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