改訂新版 世界大百科事典 「スイロク」の意味・わかりやすい解説
スイロク (水鹿)
sambar
Cervus unicolor
偶蹄目シカ科の哺乳類。サンバーともいう。インド,スリランカ,ミャンマー,マレー半島,フィリピンなどに広く分布する3尖の角をもつ大型のシカ。体色はふつう褐色だが,黒褐色からほとんど黒色に近いものもある。森林の水辺近くに好んですみ,毎日水を飲みにでかけ,よく水に入り泳ぐのもうまい。体長170~270cm,尾長22~35cm,体重150~315kg。ただし,フィリピンなどの島にすむものは,体長100~115cm,体重40~60kgと比較的小さい。昼間は,森林の中に潜んで休み,おもに夜,林縁部などに出て,草木の葉,果実を食べる。他のシカ類と同様,雄の角は毎年はえかわり,その時期はインドでは11月である。雄は角を突き合わせて戦い,谷間ごとになわばりをつくり,そこに入ってくる雌の群れを,いわゆる〈ハレム〉として所有する。交尾期は11~12月である。妊娠期間は250日前後。雌は1産1子を生む。3~4年で成熟し,寿命は20年以上。雌は小さな群れで生活し,雄は交尾期以外は単独で過ごす。
執筆者:今泉 吉晴
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報