日本大百科全書(ニッポニカ) 「スピネル顔料」の意味・わかりやすい解説
スピネル顔料
すぴねるがんりょう
スピネル型構造をとる顔料の総称で、一部を除き、ほとんどがセラミックス(陶磁器)の分野で利用されている。酸素を省略した形で組成を示すと、黒では、ほとんどこのスピネル顔料により占められ、Co‐Cr‐Fe、Co‐Mn‐Cr‐Fe、Co‐Ni‐Cr‐Fe、Co‐Ni‐Mn‐Cr‐Feなどの系のスピネルが、石灰釉(せっかいゆう)で鮮明な呈色をする。茶ではZn‐Cr‐Fe、Zn‐Al‐Cr‐Feの系で、組成を変えることにより、黄味茶、赤茶、栗(くり)茶などの広い範囲の呈色が石灰亜鉛釉などにより得られる。緑ではCo‐Zn‐Al‐Cr系スピネルであるピーコックが石灰釉で青緑の呈色をする。青ではCo‐Zn‐Al系スピネルの海碧(かいへき)(一般の無機顔料ではコバルトブルーとよばれる)が有名であるが、これは高火度釉では分解してしまう。またZn‐Al‐Cr系スピネルのスピネルピンクが酸化亜鉛ZnOとアルミナAl2O3の多い釉で鮮明な呈色をする。このようにセラミック顔料のなかでスピネル顔料は重要な位置を占めているが、最近一般の無機顔料の分野で、一部スピネル顔料が用いられるようになった。実例はCo‐Zn‐Al系の青、Co‐Ni‐Zn‐Ti系の緑、Zn‐Cr‐Fe系の茶である。このほか、Co‐Al、Co‐Mg‐Sn系の青が絵の具に、Zn‐Fe、Mg‐Fe系の黄味茶がプラスチックの着色に用いられている。
[大塚 淳]