スピネル(読み)すぴねる(英語表記)spinel

翻訳|spinel

日本大百科全書(ニッポニカ) 「スピネル」の意味・わかりやすい解説

スピネル
すぴねる
spinel

尖晶石(せんしょうせき)という名称も同義語として用いられる。スピネル鉱物総称をさす場合と、その一員である狭義の単一鉱物種スピネルをさす場合とがある。混乱を防ぐ場合には、後者を苦土スピネルあるいは苦土尖晶石という。スピネルは、熱変成を受けた苦灰岩、ケイ酸分に乏しい粘土質の堆積(たいせき)岩、超塩基性岩、塩基性岩中などに産する。自形は正八面体を基本としたもので、これを基体とした反覆双晶(スピネル双晶)をつくることがある。日本の産地としては、岐阜県揖斐川(いびがわ)町春日(かすが)鉱山閉山)、大分県宇目(うめ)町(現、佐伯(さいき)市宇目)木浦(きうら)鉱山(閉山)などが有名。透明なものは研磨して宝石として用いられることもある。とくに赤色のものはルビーの代用品として用いられる。語源は、ラテン語の「小さなとげ」を意味するスピネラに由来する。

加藤 昭 2017年8月21日]



スピネル(データノート)
すぴねるでーたのーと

スピネル
 英名    spinel
 化学式   MgAl2O4
 少量成分  Fe2+,Mn,Zn,Fe3+,Ti,V3+,Cr
 結晶系   等軸
 硬度    7.5~8
 比重    3.58
 色     灰,淡紫,紅,緑,淡褐
 光沢    ガラス
 条痕    白
 劈開    無
       (「劈開」の項目参照

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スピネル」の意味・わかりやすい解説

スピネル
spinel

スピネル族のスピネル系に属する鉱物のうち,MgAl2O4 の化学組成を有する相を狭義のスピネルという。尖晶石ともいう。等軸晶系。無色,赤,青,黄など種々の色を呈する。比重 3.6,硬度 7.5~8。スピネルは,泥質岩起源の高温広域変成岩中や,接触変成岩中,あるいは火成岩に取込まれた泥質捕獲岩中などにみられる。宝石として用いられるのは,主としてこの狭義のスピネルである。マントルの主要構成物である橄欖石は高温高圧下でスピネルと同じ結晶系に相転移する。この (Mg,Fe)2SiO4 の高圧相もスピネルということがよくある。

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