コバルトブルー(読み)こばるとぶるー(英語表記)cobalt blue

翻訳|cobalt blue

日本大百科全書(ニッポニカ) 「コバルトブルー」の意味・わかりやすい解説

コバルトブルー
こばるとぶるー
cobalt blue

コバルトアルミニウムスピネルCoOAl2O3を主体とする鮮明な青色顔料で、耐光性、耐候性耐酸・耐アルカリ性いずれも大で非常に安定な顔料である。一般の無機顔料とセラミック顔料とで若干製法等を異にする。

(1)一般の無機顔料 普通、コバルトブルーというとこれをさす。酸化亜鉛ZnOはほとんど使用せず、場合により酸化マグネシウムMgOが少量配合される。モル比で酸化コバルトに対しアルミナがごくわずかに多い程度で、だいたい1対1に近い。コバルトとアルミニウムの水酸化物を共沈させるか、あるいは酸化コバルトと水酸化アルミニウムなどを配合、900~1000℃で焼成して得られる。絵の具には欠かせない顔料で、このほか塗料、プラスチックの着色に用いられる。

(2)セラミック顔料 この分野では海碧(かいへき)、マットブルーともいう。酸化コバルト、酸化亜鉛、水酸化アルミニウムを配合、1200℃の焼成で得られる。主体は(CoZn)OAl2O3のスピネル。この顔料は、釉(ゆう)や素地の成分と反応し、色が紫みを帯びてくるので、高火度の釉には使いにくいが、上絵用としては重要な顔料である。この顔料は、他のセラミック顔料と若干違った意義をもっている。すなわち、3価のコバルトの混在する一般の酸化コバルトを、水酸化アルミニウムや酸化亜鉛とともに焼成し、すべてのコバルトを2価の状態にして使用するという目的でつくられた顔料でもある。3価のコバルトは釉の発泡原因となるからである。

大塚 淳]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コバルトブルー」の意味・わかりやすい解説

コバルト・ブルー
cobalt blue

絵具の色名の1つ。古くはドイツ青という名で知られた青色顔料。組成はアルミン酸コバルト CoO・Al2O3 で,古代ローマのプリニウスの記録にもみられる。 1802年 L.-テナールが化学的に製造法を発明したためテナール青とも呼ばれる。絵具として用いられたのは 40年頃からである。色相は原鉱を焼成する温度と冷却に移行する際の温度によって異なるので,標準の色相を定めるのはむずかしいとされる。また粒子の大きさによっても発色に差異が生じる。しかし油絵具として用いられると透明な美しい碧色を呈する。堅牢で耐候性,耐熱性,酸およびアルカリにも強く,油との乾燥力もよくすぐれた絵具。

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