改訂新版 世界大百科事典 「スラマタン」の意味・わかりやすい解説
スラマタン
selamatan
インドネシアのジャワ人が行う神人共食の儀礼。クンドリともいう。誕生,結婚,死などの通過儀礼,家屋の棟上げ,旅立ちその他あらゆる家族ごとの祝事,村,国家,企業などの儀式,イスラム暦の祭日などに伴って行われる。主催家族は儀礼機会ごとに内容の厳格に定まった多数の食物(米飯,鶏肉,副菜類,菓子,果物など)を諸神霊への供物として用意し,隣近所の10~20戸ほどから各成人男子1名が招かれ,イスラムの役職者がコーランの一節を朗誦する。儀式は15分ほどで終わる静かで簡潔なもので,その後供犠の食物は分配され,各参加者が持ち帰って家族とともに食べる。日常的に随所で絶えず行われるスラマタンは,何ごともなく平穏無事な生活を祈願するものである。ジャワ人の最も日常的で重要なイスラムの儀礼であり,ジャワのイスラムが全体としてそうであるように,土着的・インド的要素がイスラム的形式と併存している。
執筆者:関本 照夫
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