イスラム暦(読み)いすらむれき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「イスラム暦」の意味・わかりやすい解説

イスラム暦
いすらむれき

アラビア地方に発生した純太陰暦マホメット暦、回教暦ともいう。636年、イスラム教主第2世オマル'Umar(在位634~644)が採用した。教祖ムハンマド(マホメット)がメッカからメディナに脱出した西暦622年7月15日木曜日を紀元年数の起算点と定め、これをヒジュラ紀元という。この7月15日という元期は天文学的に新月などの日付を計算するときに用い、実際はその翌日の月光を初めて認めた7月16日金曜日から数える。閏年(うるうどし)は30年に11回で、ヒジュラ紀元を30で割り、その残りが2、5、7、10、13、16、18、21、24、26、29となる年を閏年とする。

 1年は12か月で、大月30日、小月29日で、大月から始めて交互に繰り返し、平年は354日、閏年は最後の月を30日として355日とする。したがって30年360月の総日数は1万0631日となり、実際の360平均朔望月(さくぼうげつ)との差はわずか17分という、月に対する回帰だけについていえば優秀なものである。しかし太陽暦の1年に対しては10日あまり短いため、その年首は季節を通じて移っていく。月は新月の日を初日として数え、日は日没に始まる。イスラム教徒は今日、宗教的行事にだけこの暦法を用いている。第9月のラマダーン日中断食が行われる月として知られている。

[渡辺敏夫]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イスラム暦」の意味・わかりやすい解説

イスラム暦
イスラムれき
Islamic calendar

イスラム教徒の用いる純太陰暦で,回教暦,ときにはマホメット暦ともいう。ムハンマドがメッカからメジナへ移ったヒジュラの年,ユリウス暦 622年の7月 16日をもって紀元1年1月1日とする。 12ヵ月を1年とするが,暦月は 30日の月と 29日の月とが交互におかれ,したがって1年は平年 354日となる。また 30年間に 11日の閏日を差入れ,閏年は 12月を 30日とするので,355日となる。いずれにせよ太陽暦の1年より 10~11日短い。そのため年始は季節とは無関係である。イスラム圏のなかでも現在では一般の生活には太陽暦に切替えたところもあるが,宗教的行事はすべてこのイスラム暦に従って行われている。たとえば断食の月は第9月 (ラマダーン) にあたる。

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