セカイ系(読み)せかいけい

知恵蔵 「セカイ系」の解説

セカイ系

マンガやゲーム、娯楽小説ジャンルの一つであるライトノベルなどで見ることができる物語類型総称。明確な定義はないが、インターネットを通じて2002年頃から広まった言葉で、後に、活字でも広がった。少年と少女の至極一般的な日常生活を、主人公の精神面や心情ばかりをクローズアップして描いているが、その恋愛や生活は世界の危機と直面している。しかし、世界の危機という大規模な問題がなぜ起こったのか、今世の中はどうなっているのかといった、社会や主人公周辺の具体的な描写は欠落している。このような共通点を持つ物語を「セカイ系」と呼ぶ場合が多い。
セカイ系の代表的な作品は、1995年に放送されたアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」であり、セカイ系という言葉を生み出すきっかけとなったともされている。その他、漫画雑誌「ビッグコミックスピリッツ」で、2000年から2年近く連載された、高橋しんのマンガ『最終兵器彼女』や、電撃文庫のライトノベルで、秋山瑞人著の『イリヤの空、UFOの夏』、東京国際アニメフェア21公募部門で優秀賞、文化庁メディア芸術祭のデジタルアート部門特別賞などに輝いた、新海誠の個人制作アニメーション「ほしのこえ」などが、セカイ系の代表的な作品と言われている。
「ほしのこえ」では、同じ高校に行きたいと願う、中学3年生男女の淡い恋心を描いているのだが、少女が、異生命体の脅威に立ち向かう国連宇宙軍のロボットに乗るメンバーに選ばれ、何光年も離れた場所で異生命体と戦うことになる。
この物語は、離ればなれで、なかなか連絡の取れない2人のやりとりと心境が中心に描かれているが、なぜ普通の中学3年生の少女が、どのような経緯で、国連宇宙軍に選ばれることになったのか、家族や彼女の周辺の状況はどうだったのか、などといった点については、全く触れられていない。

(横田一輝  ICTディレクター / 2012年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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