改訂新版 世界大百科事典 「セセリモドキガ」の意味・わかりやすい解説
セセリモドキガ
鱗翅目セセリモドキガ科Hyblaeidaeの昆虫の総称。熱帯地方を中心に約30種を産する。すべて昼間に活動し,一見セセリチョウに似るのでこの名がある。日本の温帯域には特産種ニホンセセリモドキHyblaea fortissimaが分布しており,山間の渓流沿いの日だまりを早春に飛翔(ひしよう)する。開張3cm前後。前翅は暗灰色でやや黄灰色を帯び,暗色点が密に分布する。幼虫はムラサキシキブを食草とし,6月ころ葉をつづって隠れ家をつくり,その中にすむ。7月に羽化するが,まもなく休眠に入り,翌春まで活動しない。このような生活環は温帯への適応によって生じたものであろう。そのほか,日本にまれに飛来することのあるキオビセセリモドキH.pueraは,赤道を取り巻く世界の熱帯に広く分布し,アジアではチーク樹(クマツヅラ科)の害虫とされる。この科はもとヤガの一部とされたこともあったが,現在では独立の科として扱うのがふつうである。
執筆者:杉 繁郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報