日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゾル‐ゲルガラス」の意味・わかりやすい解説
ゾル‐ゲルガラス
ぞるげるがらす
sol-gel glass
溶液中での化学反応を利用することにより、溶融状態を経ることなく低温で合成されたガラス。ガラスの一般的な作製方法は、酸化物などの粉体原料を高温に保たれた溶融炉で溶解し、流しだすことによって冷却固化させる。一方、ゾル‐ゲルガラスは、出発原料である金属アルコキシドのアルコール溶液を、加水分解および重縮合反応させ、ゾルを経てその固化体であるゲル(ゼリー状の固体)を作製し、熱処理により内部に残された溶媒を取り除き、緻密(ちみつ)化させることで得られる。ゾル‐ゲル法は、低温合成法であるため、比較的熱に弱い有機物との複合化も可能である。また、溶液から反応を進めるために、分子や原子レベルでの均一な混合が可能で、シリカガラス(石英ガラス)、コンタクトレンズなど、さまざまな微細構造、形態、機能をもった材料の合成に応用することができる。ゾル‐ゲル法によるコーティング膜は、もっとも早く実用化された応用例である。
[伊藤節郎]