日本大百科全書(ニッポニカ) 「タイリクイタチ」の意味・わかりやすい解説
タイリクイタチ
たいりくいたち / 大陸鼬
Siberian weasel
[学] Mustela sibirica coreana
哺乳(ほにゅう)綱食肉目イタチ科の動物。イタチの1亜種で、シベリアからヒマラヤ、タイとアジア大陸東部に広く分布する。このうち朝鮮半島産のものはチョウセンイタチ、対馬(つしま)産のものはタイシュウイタチ(対州イタチ)ともよばれる。本州、九州、四国に以前からいるニホンイタチ(ホンドイタチ)M. s. itatsiとは別亜種にするのが普通であるが、チョウセンイタチとはとくに形態や毛色に差があり、染色体も違っていて雑種ができないことから、タイリクイタチとニホンイタチとを別種とする考えもある。しかし、大陸での地域的な差も大きいので、それらとの比較が必要とされる。タイリクイタチの体形は、ニホンイタチよりやや大きく、雄は体長25~40センチメートル、尾長18センチメートル、雌は体長18~30センチメートル、尾長15センチメートル。毛色は一般にニホンイタチより黄褐色で、四肢の先が黒くない。昭和初期に関西地方で毛皮用に飼育されていたものが逃走して野生化し、現在では中部地方、四国、九州北部などへ分布を広げている。習性はニホンイタチと同じであるが、平野部に多く、前記の地域では都市部や近郊のイタチはほとんど本亜種で占められている。
[朝日 稔]