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たちぎれ線香(読み)たちぎれせんこう

改訂新版 世界大百科事典 「たちぎれ線香」の意味・わかりやすい解説

たちぎれ線香 (たちぎれせんこう)

落語。原話は《江戸嬉笑(きしよう)》(1806)所収の〈反魂香(はんごんこう)〉。代表的な上方落語で,東京では《たちきり》と称する。船場(せんば)の大家(たいけ)の若旦那が道楽のあげくに,100日間,蔵に閉じこめられた。そのあいだに,恋人の芸者小糸は恋わずらいで世を去った。100日過ぎて小糸の家を訪ねた若旦那が,悲しみのうちに線香をあげると,仏壇に供えてある三味線がひとりでに鳴りはじめ,地唄《雪》を唄う声が聞こえはじめた。若旦那が涙ながらに聞いていると,唄声が急にとだえたので,糸でも切れたかと聞くと,芸者家の内儀おかみ)は〈この妓はもう三味線ひかしまへん〉〈なんでやねん〉〈線香が,ちょうどたちきりました〉。昔は芸者の花代を,燃える線香の時間をもとに勘定していた。今ではそういう説明がないとわからなくなってしまった古典物である。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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