広義には仏像を安置する壇。古代には寺院の内陣に石壇,漆喰(しつくい)を塗った土壇,あるいは木壇を設けて仏像を安置し,その形も方壇,八角壇,十六角壇,円壇などがあった。中世以降,寺院内陣が土間から板敷きとなるにつれて木壇が中心となり,とくに須弥山(しゆみせん)をかたどった須弥壇形式の木製仏壇が多くなった。宗団寺院とは別に,在家有力者の間には持仏堂や仏間が中世によくみられ,とくに武士団の惣領家の屋敷周辺には持仏堂が創設され,氏仏とか守護仏と称する仏像を納めた厨子(ずし)を堂内木壇上に安置し,惣領家の司祭権のもとに一族繁栄の祈願や祖先供養が営まれた。厨子は仏像を納める祠殿であり,今日一般に用いる狭義の仏壇はこの厨子型仏壇を指し,これは堂宇と仏壇を兼備した古代寺院のいわばミニチュア版であり,一般民家には近世元禄以降にみられるようになる。すなわち近世の寺檀制度の成立や民衆の〈家〉の確立とそれに伴う祖先祭祀の高揚などから,仏像や宗祖の像(彫像や画像)のほかに,わが家の先祖霊の依代(よりしろ)としての位牌が厨子型仏壇に安置され,香炉,燭台,花瓶,飯食器,鉦,過去帳,家系図,名号や題目などの軸物も併備され,家族の朝晩の供養のほか,盆,彼岸,月忌,年忌法要には檀那寺の僧侶の回向(えこう)が行われるようになった。仏壇の原義は本尊仏のまつり場所にあったが,民家に生じた仏壇は,位牌を安置することからもわかるように先祖供養の場所としての性格を強くもつにいたり,本尊仏もしばしば先祖と結びついて語られる傾向になった。在家の厨子型仏壇は外形的には古代寺院,中世の持仏堂や仏間に系譜を求めることができるが,民間に仏壇が受容された信仰的背景には盆の精霊棚(しようりようだな)の存在があげられる。新仏のある家では盆の期間中,縁側などに精霊棚を設けて新仏をまつるが,こうした臨時の仏棚(ほとけだな)が魂祭の際に設けられていた前史があり,近世の仏教の影響から常設の仏壇も容易に受容されたと考えられる。
→厨子
執筆者:赤田 光男
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広義には仏像を安置する壇のことで、須弥壇(しゅみだん)をさす。石壇、土(ど)壇、木壇はその材質による呼び名である。狭義には寺院の内仏堂や一般家庭に設けられた仏像・先祖の位牌(いはい)を安置する厨子(ずし)をいう。『日本書紀』天武(てんむ)天皇14年(685)3月27日の詔(みことのり)に「諸国(くにぐに)の家毎(ごと)に仏舎(てら)を作り乃(すなわ)ち仏像及び経を置き、以(もっ)て礼拝供養(らいはいくよう)せよ」とあるのが文献上の初見である。民間に広まるにつれて、民俗的な祖霊信仰と結合し、先祖の位牌を祀(まつ)り、供養する祭壇の意に変わっていった。宗旨によって様式を異にするが、総じて須弥壇に本尊を安置し、小型の場合には左右に位牌を祀る。また、三段からなる大型の場合には、上段の中央に本尊、左右に脇侍(きょうじ)または祖師像ないし掛軸を祀り、前方左右に位牌を祀り、位牌の間に向かって右から仏飯器、茶台を飾り、中段には香炉(こうろ)、過去帳(かこちょう)を中心に左右に吊灯籠(つりとうろう)、高杯(たかつき)、常花(じょうか)、花立(はなだ)てを配置し、下段には右から生花立て、燭台(しょくだい)、線香差し、鈴(りん)()、線香用前香炉、燭台、生花立ての順に配置する。仏壇の前には経机(きょうづくえ)を置き、右側に木魚(もくぎょ)を置く。
[藤井正雄]
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…室町以後は透彫の彫刻を入れたものが現れてくる。
[仏壇]
奈良時代の仏堂は土間であるから,仏壇(須弥壇(しゆみだん))は石を使い,壇上積み基壇と同様につくられる。板敷ができてから木製になるが,構造は同様で上下の框と束からなり,その間に板をはめる。…
…元来念持仏は自宅の一室に宮殿,厨子を安置し,私的に礼拝するものであるが,別棟や小堂を設ける場合もあり,これを持仏堂という。今日各家庭にみる仏壇は江戸時代にその形態が成立するが,これは念持仏安置が一般化し,普及発展したものといえる。日本最古の念持仏として,法隆寺に伝存する橘夫人念持仏の銅造阿弥陀三尊像とその厨子が名高い。…
※「仏壇」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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