日本大百科全書(ニッポニカ) 「タマザキツヅラフジ」の意味・わかりやすい解説
タマザキツヅラフジ
たまざきつづらふじ / 玉咲葛藤
[学] Stephania cephalantha Hayata
ツヅラフジ科(APG分類:ツヅラフジ科)のつる性落葉植物。台湾、琉球(りゅうきゅう)諸島、中国の揚子江(ようすこう)以南に分布する。全株無毛で、老茎の下部は木化する。葉は長さ2.5~8センチメートル、幅3~8.5センチメートルの三角状卵円形で、長い葉柄に盾状につき、円形の茎に互生する。葉腋(ようえき)から出る長い花軸の先には、十数個の小花が集散状につく。花は萼片(がくへん)4個、花弁4個、雌雄異株で、雄花には合生雄蕊(ゆうずい)があり、雌花には1心皮からなる雌(し)蕊が1個ある。核果は径6ミリメートルの球形で赤熟する。地下には黒褐色で径1~5センチメートルの不整塊状の根茎があり、この塊茎を台湾では毒蛇の咬傷(こうしょう)に外用したり、結核、ハンセン病などの治療に民間的に使用する。かつて日本でも、塊茎からアルカロイドのセファランチンを抽出し、これを結核治療薬として大いに利用したが、現在では、百日咳(ぜき)、糖尿病、胃潰瘍(かいよう)、白血球減少症、円形脱毛症などに用いている。なお、日本ではセファランチンを得るために、本州中部以西で本種が栽培されている。
[長沢元夫 2019年9月17日]