改訂新版 世界大百科事典 「ダティスカ」の意味・わかりやすい解説
ダティスカ
Datisca cannabina L.
ヒマラヤ山麓地方から小アジアに分布するアサに姿が似た多年草で,高さ2mになる。葉は7~13の小葉をもつ奇数羽状複葉で,互生する。小葉は長さ10cmに達する披針形で,鋸歯がある。雌雄異株。花序は葉腋(ようえき)に生じ,雄花では萼片3~9枚,おしべ8~多数,雌花では萼片3~8枚,花柱3~5本で,3~5本のおしべをもつことがある。花弁はない。果実は長さ約1cmの円筒状の蒴果(さくか)。根,茎,葉から黄色染料が得られ,かつては絹の染料として多く用いられた。ダティスカ属Datiscaには北アメリカ南西部の乾燥地域にもう1種D.glomerata Baill.があり,同様に草本である。
ダティスカ科Datiscaceaeは以上のほかに,東南アジアからニューギニアにかけての熱帯降雨林に広く分布するテトラメレス・ヌディフローラTetrameles nudiflora R.Br.およびオクトメレス・スマトラーナOctomeles sumatrana Miq.の2属2種を含み,これらはダティスカ属と異なり,高さ45~65mに達する大高木である。その木材,とくに後者は日本にもよく輸入され,ビヌアンbinuangまたはエリマerimaの名で知られる。この2属をダティスカ科から分離し,別の科テトラメラ科Tetramelaceaeを立てる説も出されている。
執筆者:緒方 健
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報