改訂新版 世界大百科事典 「ツァジウス」の意味・わかりやすい解説
ツァジウス
Zasius
生没年:1461-1535
ドイツの法学者。ドイツ名はツェジUlrich Zäsy。ローマ法の継受期すなわちドイツの固有の法学の開始期における卓越した業績を示した。コンスタンツの富裕な市民の子に生まれる。同市で公証人,書記などをつとめてから,1494年にフライブルクの都市書記となる。人文主義思潮に心酔して一時期ラテン語の教師となったが,1501年フライブルク大学で法学博士の学位を取得,翌年同市裁判所書記と大学法律顧問に就任,03年から死没まで教授職にあった。人文主義法学の先駆者のひとりであり,当時ドイツで支配的であったイタリア法学を痛烈に批判し,権威的な学説への盲従の排除,純粋な原典の理解を基礎とした理性的判断の必要を主張した。しかし同時に,つねに実務を念頭においており,個々の問題の解決において伝統的・スコラ的方法の影響を強く示してもいる。1520年のフライブルク都市法の起草(ローマ法源の適切な採用,固有法源の十分な尊重,卓抜した立法技術により,もっともすぐれた改革都市法典とされる)は,その法学の真髄を示したものといえる。
執筆者:佐々木 有司
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報