日本大百科全書(ニッポニカ) 「知的財産国際取引所」の意味・わかりやすい解説
知的財産国際取引所
ちてきざいさんこくさいとりひきじょ
Intellectual Property Exchange International
特許や商標などの知的財産権を売買する世界初の取引所。略称IPXI。本部をアメリカのシカゴに置き、2013年6月から取引を開始した。特許などの知的財産権は保有者と利用者が相対でライセンス契約を結び、その知的財産権を使って生産した個数や売上高に応じてライセンス契約料を払うのが一般的である。知的財産国際取引所では、知的財産権をあらかじめ決まった数量(件数)だけ使える「単位実施権(ULRコントラクトUnit License Rights Contract)」に換算し、取引対象とする。たとえば「自動車のテールランプ用に発光ダイオードを年間100万個製造できる権利」や「デビットカード47万枚分の年間使用権」などを売買する。取引所で売買するため、知的財産権の取引価格を公正・透明に決められるほか、知的財産権の需要拡大や技術革新を後押しする効果が期待できる。理論上、購入した実施権が余った場合には、取引所の価格推移をみながら売却することも可能である。
知的財産国際取引所は、ヒューレット・パッカード、JPモルガン・チェース、フォード、フィリップス、ソニー、三菱電機などの関係企業のほか、プリンストン大、シカゴ大などの大学や研究所が参加する会員組織である。売買参加や実施権購入だけならば会費は無料。自らが保有する知的財産権を上場する場合には、有料会員になる必要がある。取引所を運営する持株会社IPXIホールディングスには、シカゴ・オプション取引所などが出資している。2013年6月、フィリップスの保有する有機発光ダイオード(OELD)関連の特許実施権を上場したほか、2014年7月にはJPモルガン・チェースのデビットカード関連特許実施権を上場した。しかし上場した実施権は数件にとどまっており、上場件数や売買高など市場の厚みをどう増していくかが課題となっている。
[矢野 武 2015年4月17日]