知恵蔵 「ツアーバス事故問題」の解説
ツアーバス事故問題
00年2月、道路運送法の改正により、タクシー事業、バス事業が免許制から許可制へと規制緩和された。これにより新規参入が相次ぎ、貸し切りバス事業者は2864社(00年)から4536社(12年)へとほぼ倍増した。07年には、大阪府吹田市でスキーツアーバスがモノレールの橋脚に衝突し、27人が死傷(死亡1人)。更に12年には、関越自動車道上り線(群馬県藤岡市)で、ツアーバスが道路脇の防音壁に衝突し、7人の死亡者を出すという大事故を起こした。
これに対し、国土交通省は従来の高速ツアーバスを見直し、13年8月に「新高速乗合バス制度」をスタートさせ、バス事業者に停留所の設置、一定数の車両台数の保有、運行計画書の事前届けなどを義務付けた。また、運転手の過酷な勤務状況の改善に向け、走行距離の上限を1日670キロメートルから500キロメートル(夜間は400キロメートル)に制限。この上限を超える場合、交代運転手の配置を義務付けた。しかし新制度スタートから3年も満たないうちに起こった冒頭のスキーツアーバス事故を受け、国土交通省は有識者や業界団体の代表からなる「軽井沢スキーバス事故対策検討委員会」を設置。新規参入の審査や監視体制の強化、運転手の技術チェック、処分の厳格化などを軸とした再発防止策をまとめる予定。
(大迫秀樹 フリー編集者/2016年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報